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Renaissance: A Film by BeyoncéのISHIPのネタバレレビュー・内容・結末

Renaissance: A Film by Beyoncé(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

年末。ギリギリ間に合いました。とにかく最高の一言なのだが。とにかく最高の一言ですませたくない、そんな作品だ。
僕は浦和の映画館で観てきたのだが、埼玉唯一の上映館だったので、埼玉でもこういう上映はドシドシやってくれないと困るので浦和で観てきた次第である。今後も浦和をご贔屓に。頼むぜ。それにしても、MOVIXさいたまはドルビーシアターなのに上映なかったのなんでだろ。

ライブムービーと言えば、先日Taylor SwiftのTHE ERAS TOURを観てきたばかりだが、全く作りの違うものだった。テイラーの方はライブステージを見せ続ける構成だったのに対し、このRenaissance tourは、ライブムービーでありながら、その準備過程であるとか、彼女の苦悩、このツアーにかける想いなど、ドキュメンタリー要素が強く、映画的な作りとなっているのが特徴であった。
冒頭、これは本当に冒頭か?クライマックスなのでは?と思うほどに、ビヨンセは観客、スタッフ、そして自分自身に対しても感謝を述べる感動的なシーンがある。この中で、自分が42歳であることに感謝をするという非常に印象的な言葉がある。また、このRenaissance tourが、正解も間違いもない、ただ道として繋がっているものなのだ、というメッセージがその後語られる。彼女はこのライブを完成品として見せたい訳ではなく、むしろ過程こそが自分の見せたい完成品なのだと。わりと前半で、停電のトラブルに見舞われるシーンがあるが(あまりに作り込まれているのであれすら演出なのではと思ってしまったが…)、こういうトラブルを敢えて映画の前半に据えることで正解も失敗もない、というメッセージがよりハッキリしたものとなる。過程を重要視する、というところでも、このツアーがどのように作られているのかにもカメラが向けられるのだが、いわゆる黒子的なスタッフを敢えて可視化しやすい衣装を着せ目立たせているのだと語る。彼女は圧倒的なボスでありながらも、独裁的ではないのだ。去年リリースされたアルバム「Renaissance」に目を向けると、この映画でもたくさん語られるように、ハウスミュージックをふんだんに取り入れているのだが、なぜそうなっているかの背景に、ハウスがクィアカルチャーと密接な関係にあることがこの映画を観ると英語詩が分からない僕のような人間にもよく分かるだろう。性的なマイノリティもこの空間ではカンケーない、みんな自由に踊れる空間なのだ。あの大規模な会場だが、そこにいるお客さんはとても自由に踊れているように感じられた。すげえなあ。
その他、彼女の娘がステージに上がること、家族、叔父との関係、また自分が影響を受けた、自分に影響を受けたミュージシャンの登場などから見えるの継承の物語であったり、彼女がスターであり続けていることの苦悩であったり、そんな彼女から発せられる人生そのものを肯定するような言葉たち。見所がありすぎる。時間に対しての言葉とかもはや哲学的。映画としてよく出来ているのに音楽も大音量(ドルビーじゃなくてもかなり爆音だった)で最高峰を味わえるという。これ8日間のみの上映てもったいないなあ…。圧倒的パワーすぎて、終盤打ちひしがれて少々疲れてしまった部分もあるのだが笑、最後まで飽きることなく観れました。僕は頭振りまくりの手とか上げちゃったりしてたのだけど、周りの人はそんな人あんまりいなくて、もうちょい盛り上がっても怒られないかな?なんて思ったり。しました。とにかく最高。ビヨンセ全然詳しくない僕だけど最高に楽しめました。
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