フライ

シャロウ・グレイブのフライのレビュー・感想・評価

シャロウ・グレイブ(1994年製作の映画)
3.8
本作監督ダニー・ボイルのトレインスポッティングの薬物に溺れる若者の狂気と闇を斬新に描いた作品は、見応えのある秀作だが、その前に製作された本作は、正にその片鱗をのぞけるだけに、違った視点で破綻して行く若者の友情と信頼、深い闇や狂気を味わえるストーリーは、負けず劣らず見応えのある秀逸なサスペンススリラー。

ジャーナリストのアレックスと会計士のデビッド、医師のジュリエットは、広い部屋をルームシェアしながら暮らす仲のいい友達だが、空いている一部屋を貸す為、人でなしとも思える、暇つぶし的に面接に来る人達をからかいながら対応する様な3人。
そんなある日、自称小説家でミステリアスな中年男性 ヒューゴが面接に現れ、対応したジュリエットが気に入り2人に進める。ヒューゴの金払いの良さなどから同居を許すも、引っ越して来て早々、部屋の中で薬物中毒らしき症状で死んでいるのを見つける。そしてヒューゴの持ち物を調べていると大金が入ったスーツケースを見つけ3人の生活は一変していくのだが。

ストーリーが進む内に分かるヒューゴと言う人物像や、3人の色々な意味での危機、徐々に変わって行く関係性など中々見所の多い内容は、終始緊張感がありとても楽しめた。特に、序盤勢いのあるアレックスと、真面目なデビッドの立場が入れ替わる展開は、豹変するデビッドの狂気も手伝い興味深く楽しめた。お金と言う人を変える悪魔の誘惑が、紅一点で優しいジュリエットも豹変させてしまうのが、ラストの展開含め尚更面白さも。

作内に描かれた安易な行動をする人や、人間性を見抜けず薄っぺらい信頼関係から破綻する人は実社会にも見受けられるだけに、単純に映画の世界の恐怖としてだけでは無く、リアルな怖さや愚かさとして見れたのも良かった。

イケイケの性格のアレックスを演じるユアン・マクレガーの初々しい演技も見所だが、そんな彼のシュールなラストは、中々の狂気と怖さを感じさせてくれるだけに、結構見応えのある作品だった。
フライ

フライ