dm10forever

Mr.マーベラスのdm10foreverのネタバレレビュー・内容・結末

Mr.マーベラス(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【老兵は死せず・・・】

BSSTO(ブリリア~)にて配信開始となった、ちょっとビターなクリスマスショートムービー。

かつて一世を風靡した伝説のヒーロー「Mr.マーベラス」。
しかし、すでに彼は「過去の人」として人々の記憶から忘れ去られていた。
あの頃の栄光の日々が輝かしければ輝かしいほど、その後ろに伸びる影もまた、濃く、長く伸びていくものなのかもしれない・・・。

前に観た「LOGAN」とも通ずるような、ヒーローたちの「その後」を描いたちょっぴり切ないお話。
主人公マイクの背中に残る大きな傷跡は、過去に彼が命懸けで平和を守って戦った「ヒーローの証」。
でも、やがて時が来てヒーローを引退した彼を待っていたのは、今まで犠牲にしてきた全てのものと向き合うという現実でした。

「マイティ・ソー」や「スーパーマン」なんかは別としても、ベースが人間である以上はどんなに絶大なパワーを誇るヒーローにもいずれ老いは訪れる。
それこそ超人的なパワーだって段々と弱くなるかもしれないし、体力の回復だって若い頃のようにはいかなくなるのかもしれないし、体型だって徐々にキープが難しくなっていってお決まりのコスチュームが着れなくなったりするかもしれない・・・

アイアンマン=トニーのように、絶頂期のうちに壮絶な最期を遂げてしまえば「永遠のヒーロー」として人々の記憶に残るのかもしれないけど、そんな事のために死にたいヒーローなんていないだろうし、逆に「死ぬためにヒーローやってる」なんて奴には、おっかなくて平和は任せられないしね。

そうしていつしか新たなヒーローが生まれてくる世界にあっては、長年頑張ったヒーローたちは「新陳代謝」かのようにひっそりと表舞台から身を引き、初めて傷ついた体と心にじっくりと向き合うのでしょう。

マイクは自分の信念に基づいて平和を守るために自分の幸せすらも犠牲にして生きてきました。
それは彼と娘のレイチェルとの微妙な関係性にもよく現れています。
作中で奥さんの事には一度も触れませんが、その事を悲しんだり悔やんだりしているような描写がなかったので、恐らく死別ではなく離婚したんだと思います、それも恐らく奥さんが一方的に飛び出していったくらいの別れ方なんじゃないかな・・・

だけど、娘のレイチェルとだけはずっと繋がっていたいんですよね。
勿論、家族を顧みずに生きてきたことで家族を傷つけてきたっていう負い目もあるから、無理強いは決してしないし出来ない。
だけど、せめて「メリー・クリスマス」はちゃんと伝えたい・・・。

でもね~
そんなマイクに対するレイチェルの気持ちもわかるんだよね~。
きっと子供の頃にお母さんに連れられて一緒に出て行っちゃったのかな・・・って想像したんだけど、勿論わだかまりや複雑なものはそう簡単には癒えないんだろうけど、それでもやっぱりお父さんの事は大好きだし、誇りにも思っていたんだよね。
それがあのクリスマスプレゼントっていうね。

長年の戦いの中で彼に染みついた「戦いの匂い」は、たとえ第一線を離れてもそう簡単には消えないのかもしれない。
例えゴリゴリにサンタクロースの恰好をしておどけて見せても、やっぱりバレてしまう。

きっと「正義のヒーロー」だった時はそれすらも勲章のようにいられたけど、「ヒーローを引退した後」はむしろそれが十字架のように重く圧し掛かってくる。

これって「(架空の)正義のヒーロー」に限らず、もしかしたらスポーツやエンタメ界の世界的なスーパースターたちの晩年も、ヒーローと同じように「過去の自分」の重さに苦しむ人もいるのかもしれない。

最近MCUやDCがかつての勢いを失ってきて「次のステージ」を模索していく中で、やっぱりこういう物語だって生まれてくるよねって感じる。
(「Mr.マーベラス」っていうネーミングも、「マー〇ルヒーロー」に引っ掛けたものだよね、きっと)

観る前はもっとコミカルな感じで来るかな~って思ってましたが、意外としみじみとした気分になる一本でした。
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