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ゴースト・トロピックのrebのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.0
夜中のビル掃除の仕事をするイスラム系移民のハディージャは、帰宅途中の地下鉄で居眠りをして乗り過ごし、真夜中のブリュッセルの街を家まで歩いて帰る。
移民が多く、多文化社会のベルギー。
地域によっては白人が多い所もあるが、首都ブリュッセルは人種のるつぼである。
そして昼間から道端で物乞いをする路上生活者をびっくりするほど目にする。
なので、終電後の世界など恐ろし過ぎて、女性1人でなど歩けるものではない。
しかし、本作はヒジャブをかぶった可愛らしいおばさんの、真夜中の冒険とも言える帰り道での人々との出会いや思いやりに満ちた行動を、幻想的な夜の街の美しさと共に描いている。
彼女が帰り道で、自分の娘が地元の若者と楽しそうに遊んでいる姿を偶然目にするシーンがある。
移民2世として自由を謳歌する娘の姿を、心配ではあるがある種の羨ましさもあり、そっと見守るだけで何も言わず立ち去る。
それまで見知らぬ人々に対しては、おせっかいとも言えるほど声をかけていたのに、我が娘には何も言わない。いや言えない。
この辺の彼女の表情は良かった。
「人間は元々、他人と敵対することを本質とはしていないはず。人間を残酷に扱うことはしたくない」と語るバス・ドゥヴォス監督。
世界中で暴力的な出来事が溢れている昨今、敵対関係を描くよりお互いに協調する人間関係を描く方が、映画にするのがずっと難しいテーマであるとも語っている。
う〜ん、私はそんなに人間を信じていないし、なんでも悪い方に考えてしまうので、本作の夜中のひとり歩きはハラハラしっぱなしだった。なのに何も起こらず、全く癒されず疲れが残った。
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