まや

ゴースト・トロピックのまやのネタバレレビュー・内容・結末

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

すごく好きだった。シャンタル・アケルマンの『一晩中』を思い出した。(本作の方がより人との繋がりを温かく捉えられていたが、夜に展開される物語はとても好きだなと改めて思った)

終電を最終駅まで乗り過ごした主人公のある一晩の物語。登場人物たちの心情が語られることがないからまるでドキュメンタリーみたいだった。その一晩にいくつもの出会いと物語がある。それが大袈裟ではなくて本当にあるような物語でわざとらしがなくそれがとても染み渡った。

夜ってとても好き。夜の魔法がとてもよく映し出されていた。よく夜に映画を見終わった後に散歩するけど、きっとその一つの夜だけをとってもどこかでたくさんの物語が生まれているんだろうなという気持ちにさせられる。その一つを覗き見しているようで良かったし、また夜を好きになった。特にコンビニ的なお店の店員さんが車で送ってくれるシーン。夜の街灯や車のテールランプなど光のみが車のガラス越しから強調される画面。この美しさがとても心に刺さって涙出た。世界をとても優しく切り取った魔法のような映画だった。

最初に部屋が映し出される。その部屋を私が見えているもので私の歴史があると語られる。私の痕跡と。それがこの物語の全てを表しているように感じた。その人が見えている世界。それを切り取っていた。というセリフと共にその1日の朝から夜が映し出される。

日々の日常の中にある街の音や鳥の音が映画を包み込み、そんな世界の美しさ、一日その日の美しさ、物語性、人生はその美しいものの連続のような気分にさせられて、とても大切に日々を生きたくなった。

アキ・カウリスマキ監督作品でも感じたが、映画内で登場するワンちゃんってほんとにすごいなと。演技しているように見えるし、本作に限っては作りものみたいに雰囲気を醸し出すワンチャンだった。
まや

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