サラリーマン岡崎

ゴースト・トロピックのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.7
終電で寝過ごして、最終駅から家まで歩いて帰る話。
僕も酔っ払って何回か経験がある。だいたい、酒の勢いで歌いながら帰っている。
しかし、この映画はそんな自堕落な平凡な展開では終わらず、ただ帰宅途中を描く淡々とした映画なのに様々な人生と出会わせてくれる壮大な物語だった。

彼女が帰宅の道中に出会う人々、生・死・結婚・離婚・家族・移民…様々な人生に出会う。
その中で、彼女自身が今まで生きてきた人生も振り返る。
彼女自身も移民で大変な環境の中、家政婦として勤めていた家族もいなくなり、夫にも先立たれ、子供たちを育ててきた。
そんな人生の中で、夜の街で出会う様々な人との会話や行動は優しくもあり、時に寂しそうでもある。

特に、未成年の娘が、酒も飲みつつ、おそらく恋をしている姿を見てしまったときの表情は忘れられない。見たことがない娘の表情。いつのまにか成長してしまったことを嬉しくもあり、寂しくもある。

そんな様々な人生に出会うのが「夜中」というのも面白い。
多くの人は就寝についていて、街には人気がない。
時にそれは怖く、時に神秘的である。
だからこそ、出会う人生はドラマチック。

今度わざと終電寝過ごして、家まで帰りたくなる。
いや、そんなことしたら、家族に怒られるだけだ。