しゅん

ゴースト・トロピックのしゅんのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
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最終バスの電気が消えて、再び点灯した時に運行中止を知った乗客が渋々降りてゆく。あるいは、薄暗いATMからお金を下ろそうとして、残金不足の文字が出る。またあるいは、かつての雇い主の家の窓に立ち、不法住居の若者を発見する。電車で寝過ごした女性の真夜中の彷徨を、フィックスのカメラで映していく時間。同国人のシャンタル・アケルマンを思わせる、まるで止まっているかのような時間の進行を、アピチャッポン・ウィーラセタクンを思わせる角度と色調のうちに収めていく。だからか、本作には『ブンミおじさんの森』や『トロピカル・マラディ』を連想させる感覚が宿っていて、彷徨する女性は、どこか幽霊めいた存在として、ブリュッセルの夜の人々に降り立った霊媒として映っているように思う。最後の、唐突なビーチと女性の娘のショットにも、それまでの全てを幻に変えるような効果がある。
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