湯っ子

ゴースト・トロピックの湯っ子のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.0
夜の街と、夜の街を泳ぐゴーストたち。
電車を乗り過ごした老婦人の一夜限りの小さな冒険。袖触り合うも多生の縁、と言いますが、こういうの好きです。日常の中でのふとした出会いは、人生の喜びのひとつですね。

あのコンビニの雇われ店主?みたいな女性がふともらした「気になる人がいる」。あれって、それまで誰にも言わなかったことなんじゃないかと思う。おそらくもう会うこともない相手だからこそ言えることがあって、それを言葉にしたことから何かが動き出すかもしれない。そんな瞬間を目にしたみたいに感じた。
冒頭の詩のような独白から、自分の住まいは自分自身であるというようなことを言っていて(違うかも)、赤の他人がやってきた時に自分はそれを恥じるだろうかという一節があった。
すぐに我が家の散らかった部屋や汚れたままの洗面台や台所をすぐに思い出して、「キャー見ないで恥ずかしい♡」とか思ったけど、「まあズボラなもんで!」とも開き直れる。恥じるという感覚にはならないかもと思った。それは私を取り巻く環境のおかげなのだと思います、ありがとう。そしてこんな風に満たされた気持ちになれたのはこの映画のおかげです、ありがとう。
湯っ子

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