IMAO

ゴースト・トロピックのIMAOのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.5
前半寝てしまったけど、後半に行くにしたがってなんかしみじみしてきた。こんなミニマリズムに徹した演出だけど、キチンと伏線回収されてたりもする。冒頭の夜がふけてゆくカット、とラスト近くの夜明けのカットは、先日観直した『エル・スール』を彷彿とさせるフィルムならではの表現だ。バス・ドゥヴォス監督は、この映画を16㎜フィルムで撮影した理由を以下の様に説明している。

「今日のデジタルカメラは、その強力な光感度のおかげで、暗闇も鮮明に写すことができる。しかし私は、(主人公)ハディージャにとっての夜は圧倒的なものであり、脅威となりうるものとして可視化したかったので16㎜で撮影することを選んだ。浮かび上がるフィルムの粒子が、暗闇をまるで生き物のように見せてくれ、対照的に光が差し込む瞬間は、フィルムの柔らかさと暖かみの恩恵を受けることが出来る。フィルムの不完全さはハディーンの人生のメタファーでもある。傷つきやすく、光の中で振動しているが、暗闇を恐れている」

そう!フィルムは不完全なのだ。でも「不完全」という制限こそが、フィルムの強みだったりする。創作にはある程度制限というものが必要で、それが逆に自由度を高めたりもする。そういう意味でなんでも写ってしまうデジタルよりは、フィルムの方がクリエイティブだったりする時がある。そういう部分にこそ、未だにフィルムが愛される理由があるのだと思う。

いずれにせよ、この作品は機会あればもう一回観ることになるだろう。
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