KingKazukiManji

ゴースト・トロピックのKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.5
ずっと気になっていたので滑り込みで鑑賞。
16mmフィルムと4:3の画面構成が美しかった。
この粗さが醸し出す夜の幻想さがまた味があって何ともいえなかった。上手く表現できないんだけど、夜の描写がほんとに素晴らしく、光と影の使い方がとても良かった。縁もゆかりもないベルギーの街並みに、何故こんなにも親近感を覚えるのか、ルネサンス建築がもつ芸術性が故だろうか。また、完全に計算し尽くされたようなカット群が面白く、あまりに動かない画面に最初は戸惑ったが、ジェームズ・べニングのようなそこに存在している時間と風景と音を大事にしている作家だということが伺えた。

物語としてはとてもゆっくり進んでいた。
音楽も相まって心地の良い世界観に惹かれるのだが、思っていたのと何か違った。なんだろう、もっとやさしい世界みたいなのを想像していたんだけど、その人々の交流から得られるやさしいに違和感があった。そして主人公の行動に多々苛立ちを覚えさせられたのだ。これは日本人には理解が難しい国民の警戒心というものからなのかもしれないと考えた。国民の10パーセント以上が移民から形成されてる国家と考えると、登場人物たちの素朴さにも納得がいった。

しかしながら主人公のお節介体質というのがあまり理解できなかった。娘と疎遠なのは容易に想像できたが、自分が知ってる姿と違う娘を見つけたとき、まるで鬱憤を晴らすように酒屋を警察に通報するのは如何なものかとも思った。酒屋はあんなに朝早くから働いていたのに可哀想だなとも思ってしまった。

ほとんど1人芝居の体当たりな演技は素晴らしかったな。
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