sazanami

ゴースト・トロピックのsazanamiのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.9
電車を乗り過ごした中年女性が歩いて家に帰るだけの映画が、なんでこんなに心にしみるのだろう。
大都会で終電後、移民女性が一人で長時間歩いて帰るのは、身体的にも心理的にも楽なことではないでしょう。でもアクシデントがありながらも、道中で会う人は皆それぞれやさしい。

ハディージャが車内でうつらうつらしだし、本格的に寝込んでしまうまでの描写とか、彼女が電車を待っている時、鏡に映った姿だけ見えて実際の姿が見えないとか、見せ方が面白い。大仰な表現は皆無なのに、全然退屈じゃない。
ホームレスの男性が救急車に乗せられているのを、救急隊員と一緒に見ているシーン。2人とも無表情で、同じ方向を見ながらゆっくり顔が動いていくのが妙におかしかった。
そしてあの救急隊員は、犬をつないでいるひもを、わざと柱に緩めに(ほどけるように)結んだのではないか。それが彼の優しさだと思ったし、わざわざ来た道を戻るようにして犬を確認しに行ったハディージャも、同じ優しさを持っていると感じました。

フィルムの映像が本当に美しい。夜中だけど、店内などの光があるシーンから目が離せませんでした。
街灯の、なんともいえない色合いが強く印象に残っています。

ハディージャ役の俳優、落下の解剖学にも出ていた人ですね。気がつくまで少し時間がかかってしまいました。
sazanami

sazanami