Movielover

ゴースト・トロピックのMovieloverのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.2
バス・ドゥヴォス監督作品②

掃除婦のハディージャはアラブ系移民の中年女性。ある夜、仕事終わりに最終電車で眠りに落ちてしまい、歩いて帰宅するまでの一夜を描いた物語。うわ〜、こういうの好きだ〜。

極寒の真冬のベルギー・ブリュッセル、それも真夜中。彼女と同じ社会の底辺で暮らしている人達との一期一会。夜を危険なものとしては決して描かず、困りながらも人々のちょっとした思いやりに触れる温かい出会いを描いている。

一番好きなシーンは、ハディージャがガソリンスタンドの売店でティーバッグのミントティーを飲むところ。あまりの寒さと疲れでその場に座り込んで飲んでいると、最初は無愛想な女店員さんが「車で送ってあげる」と言ってくれる。そして車中でお互いの家族のことを話し始める。

ハディージャはこの映画の中で何度も相手に "merci " とお礼をっている。とてつもなく礼儀正しい。多分これは彼女が移民としてこの国で生活しているという謙虚な気持ちからそうさせるのだろう。対して彼女の娘(たまたま夜の街で友人達と楽しそうにしているところを目撃してしまう)は友人達と青春を謳歌しており、母にとってはそんな娘が眩しくもあり、羨ましくもある。移民系の母とそこで生まれた娘(いわゆる二世)のギャップは大きい。そういう問題も描いている。

思いがけずこういう素敵な映画に巡り会えるととても得した気分になる。
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