【洗脳】CACAO
作品内容はサイトの情報の通り。カカオの魅力に憑りつかれた日本人が、生産地の環境、労働条件の改善等に取り組む姿を追ったドキュメンタリー。
主に、川上の産地、品種の問題にフォーカスしているが、もはや世界的な食材であるカカオ、チョコレートのこと、市場も流通も確立されているだろう。大手の現状はどうなっているのかには一切触れず、極めてニッチな視点でのお話に終始した。そこに作品の隠されたメッセージがあるのではと、つい深読みしてしまう。
それなりに興味は惹かれたし、カカオという”フルーツ”への理解や、製品化されるまでの手間、原生種の栽培から世界伝播の歴史について知ることができて面白かった。発酵食品という発想はなかったなあ~。へ~x8
バレンタイン月間に合わせての上映でもあるだろう。さらには、バレンタイン前の2/12のJ-WAVEのホリデースペシャルの番組も、明治の一社提供で、チョコレートの普及、カカオに効能をアピールすると共に、本作の紹介、出演者がゲストで登場と、メディアミックスも抜かりない。翌日、翌々日ともJ-WAVEでは作中で登場したガーナにクラファンで工場を作ったMAAHA CHOCOの若き代表を取り上げるなど、なかなかの力の入れようだ。
今、こうした産地側の改善、品質向上、価格見直しは、SDG’s活動の一環として、企業側も取組みやすい。映画も、利用しやすいコンテンツと言える。
が、本流の資本主義のメカニズムには一切触れず、やってますよ感を醸し出す表面的なSDG’sな活動紹介に、うすら寒さを覚えるのは、ひねくれ者の発想か?
すでに、SDG’sすらブランド化が進み商品として消費され、その本義を見失ってないだろうか。いや、SDG’sそのものが、元からそんなもんだったんだろうとも思う。
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(ネタバレ含む)
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トークショー付の上映会。あっという間のチケット完売には驚いたが、オマケが、なかなか気の利いたものだったので、なるほど納得。
映画関係者はプロデューサーさんが最初にチラと挨拶されたが、メインは、カカオ伝道師とも言える明治の社員の方のこなれたプレゼンだ。
このプレゼンが、サンプル的なチョコを頂き味の違いを体験しながら、チョコの魅力、カカオの可能性を学んでいくもので、お見事としか言いようがないシロモノ。
飽きさせないよう時々Q&Aを刺し挟み(インタラクティブな講義の基本)、実物のカカオ(果実、豆)を説明の間に回付させ手に取らせててと(実体験を加味)、進行が抜かりない。
映画はむしろ導入部分、このセミナーへの誘導が主目的だったのでは?と思わせるくらいよく出来たプレゼンだった。
カフェイン含有量の高い、%表示されている商品も、ずいぶん身近になっている。我が家も、ダイエットに効果的と、一時、食事の前のひと口を励行してたりもした。
そうした機能の売り込みに加え、産地や品種、加工法により味の違いの理解を促進し、コーヒーのように、あるいは、ワインのように、より嗜好品として嗜んでもらう方向付けをしていきたいところだろう。
その為に駄菓子のイメージ払しょく、高級品化による高値への誘導も垣間見える。生産者を守るためという大義名分で適正価格を後押しするSDG’s思想も、今や、大いなる追い風であろう。故に企業もその大看板は下ろせない。資本の理論が、もうそこに出来上がっている。
甘~いチョコを摘まみながら、世界規模のビターな戦略合戦の一端を垣間見るようだった。
土産にまで、さらに板チョコ1枚が配られ、カカオ業界は、しっかり環境や格差の問題に真摯に取り組んでいますよという甘い甘い妄想を植え付けられて、みな帰宅するのだろう。
洗脳完了! 恐ろしや恐ろしや。
P.S. 劇中登場したアルアコ族が手にする謎の道具は、謎のまま。プロデューサーさんに訊いたが「どう説明しようか検討したけど、説明のしようがないので、そのまま映した」とのこと。一種の、呪術、祈りの道具か?