シズヲ

ノスタルジア 4K修復版のシズヲのレビュー・感想・評価

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)
3.5
この映画を作った直後にタルコフスキーがソ連から亡命しているという事実、なんというか本当に大きな恐怖と深い未練が混濁していた中での決意だったことが伝わってくるし、その感覚を何としてでも芸術による“救済”に落とし込まねばならなかったんだろうなとなる。

見ている最中は映画のテーマ性を捉えきれず、長回しを多用した映像も些か冗長過ぎる印象が否めなかったものの、要所要所のカットは間違いなく衝撃的な美術性に溢れている。冒頭の霧が漂う湖畔の情景で度肝を抜かれ、その後もホテルの室内を中心とする均衡の取れた構図にひたすら唸らされ、ラストシーンなどでは半ば超現実的・神秘的な趣さえ感じてしまう。ゆっくりと移動して周囲を見渡すカメラからは“空間”を意識させられる。

迂遠で観念的な語り口には終始辟易させられるものの、見終わった後は画面作りの異様な執念が脳裏に焼き付くので何だかんだ凄まじい。もう一回見ればまた何か掴めるのかもしれない。
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