カタパルトスープレックス

ノスタルジア 4K修復版のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)
3.3
アンドレイ・タルコフスキー監督が亡命前に作った代表作の一つです。亡命前の非常にパーソナルな感情と心象風景を映像化した作品。タフコフスキーの個人体験に共感できるかどうかで大きく評価が分かれると思います。

祖国を出て感じるのがロシア人特有のノスタルジーなのだそうです。ブラジル人にとってのサウダージみたいなものだろうか?自分はロシア人ではないので、この感覚はわからない。つまり、本作は外国人にとって共感しにくいテーマを扱った作品とも言えます。

ストーリーも個人的な心象風景の映像化ですので、夢のような、モザイクのような取り留めのないものになっています。非常に大まかなあらすじは作家のアンドレイが通訳のエウジェニアとイタリアに来て、ドメニコという不思議な人物と出会うと言う話です。エウジェニアが象徴しているもの、ドメニコが象徴しているのは何かは観客に委ねられています。委ねると言っても、タルコフスキー監督の心象風景なのだから「知らんがな」となりかねない。

キャラクター造形の中心となるのが主人公アンドレイなのですが、彼も感情の起伏がなくてずっとダークな感じなので共感しにくい。「あんた、どうしたいの?」とエウジェニアじゃなくとも問い詰めたくなる。

「テーマ」、「ストーリー」と「キャラクター造形」というボクにとっての映画の芯の部分が自分的にはハマれなかった。それはタルコフスキーの非常にパーソナルな部分に触れられるかどうかで、ボクは触れることができなかったと言うこと。

一方で映画技法に関しては誰でもわかるすばらしいものでした。ウェス・アンダーソンばりのシンメトリーな構図を多用しつつ、そこに奥行くをつけた「縦の構図」になっている。画角が平行に移動し「横の動き」をつける。イタリアの風景もとてもキレイですが、それを絵画のように切り取るテクニックはさすがタルコフスキーです。