たむランボー怒りの脱出

ノスタルジア 4K修復版のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)
4.5
再見。タルコフスキーで一番良い。
初見時より断然面白かったのが嬉しい。
霧だったり温泉の蒸気だったりモワッとしたものが放つ時間感覚と水の実在感。温泉の湯が干上がっているときでさえもその水の不在から立ち上がる実在感がメキメキとある。そしてその場所で繰り返される主人公の肉体的試練(蝋燭の火を消さずに端から端まで歩く)の緊張感。

今回見て一番びっくりしたのはドメニコが演説のあと発火した瞬間にベートーヴェンが流れるけど、調子の狂ったスピーカーから流される「歓喜の歌」がドメニコの叫び声なのかバグったベートーヴェンなのか分からなくなる感じの不気味な音でめちゃ怖いこと!
(蓮實重彦「何ともうれしくなってしまうのは、この映画には、確かに自分自身との真剣勝負というような生真面目さがありながら、同時に、映画的な俗っぽさがあるところなんですよ」(『シネマの快楽』))※ドメニコが炎に包まれながら銅像から落下したあとのスタントマンの動き。