クリスティアン・ペッツォルト長編2作目、TV映画。
1945年「恐怖のまわり道(Detour)」を戦後のアメリカの薄暗い裏道から90年代のヨーロッパの殺風景な駅やアウトバーンに置き換えたと説明があった。
過去に女性ティナを騙しお金を盗みキューバで新たな生活をしようとした男トム、再会して彼女を追う。
ミステリアスな物語になると思いきや、ここでも女性を忘れられず追う男のドラマになっていき、ニースへ向かうティナを確固たる目的があるわけでもなく、追わなければという思いにかられて追いかける姿はどこか「未来を乗り換えた男」のフランツ・ロゴフスキを彷彿とさせる。
それだけティナにこだわる理由やどれだけ愛しているのかははっきりわからなかったので想像で補うしかないが、キューバで運命の女性とやり直したい独り善がりな男のロードムービーのようだった。
お互いが社会からドロップアウトしたようなキャラで、お金があればなんとかなると信じながら不透明で暗い前途も考えず。キューバに向かって逃避するという楽観的な思考でも、結局は実存的な不安から逃れられないのだと思う。
ギャングも絡み人も死ぬクライムスリラーにもなりそうな話だったが、一人の女性を忘れられず追い求める男とそれをのらりくらり妖艶に交わしていく女性の物語のようで、お得意の作風ここですでにあったんだな~と思った次第
ペッツォルトの映画に出てくるヒロインってそのキャラクターのみならず、外見も共通してるんだな。
後に複数作品で組むニーナ・ホス、パウラ・ベーア、本作のキャサリン・フレミング、みんなクールでスレンダーでミステリアスな美女で、陰がある表情が印象的。
トム役のリッチー・ミュラーもこの後ペッツォルト作品に複数出ている。