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もっと遠くへ行こう。のBlueのレビュー・感想・評価

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)
3.8
FOE=敵という意味がなんでもっと遠くへ行こうになるのかなと思っていたらば、案外日本語タイトルの方がしっくりくる内容でした。
できればシアーシャローナンの主演作品であるストーリーオブマイライフという作品をご覧になっていない方ならば、まずはこちらの映画から見る事をオススメしたいかなと思います。

シアーシャローナン、アフターサンのポールメスカル、Amazonプライムのドラマ作品の地下鉄道で印象的な演技をしたアーロンピア、言うならばいつアカデミー賞を獲得してもおかしくない三人の演技合戦が、期待どおり見れる作品でした。
演出面でかなり工夫していて考察しながら見ていたのだけど、途中からそっちのけで食い入るように見ました。

俺自身もアメリカの真ん中、中西部のネブラスカ州立大学に生物の勉強で一年半いたし、そのあと友人になった酪農家で実習という名目で一年半いて金を稼ぎつつバックパッカーやっていたので、とても懐かしく見ました。
アメリカの真ん中と夫婦の真ん中にひっかけつつ、環境破壊/温暖化で被害が出てる事と夫婦間で軋轢が生まれている事をかけている事が演出面でとても効果的だなと思いました。

まぁとにかくシアーシャローナンには今回も感心しっぱなしで、タバコ吸いながら足を組んであいるシーンがいかにも中西部にいる女性を的確に表していて、本当にうなってしまった。
いたなー、こういう人っていう。かと思ったらピアノを弾くてさばきや、玄関のドアを開く仕草がとても繊細で美しくて、一瞬とはいえそういうところでとても印象的に記憶に残るところが他の俳優とは違うというか。
ストーリーそのものがあまり劇的な動きがないので、ポールメスカルとアーロンピアの演技のぶつかり合いも際立っていたしシアーシャローナンに負けず劣らず、ますます活躍の場を広げていくと実感しました。

唯一の不満点は、大きな余韻を味わっていたのに、ラストのもう一盛りした展開が台無しにした点。吊るされた鶏肉、吊るされたビニール、そしてずぶ濡れになりながら、、、というあの演出。
色々な思いが去来していたのだけど、中西部=農業で家父長制が当たり前というイメージが先立ってのあのセリフにはちょっと雑すぎるかなと思いました。
主要キャスト三人が好きな人は、一年に一本しか見ないような人とは違って何本も見る上に、単なる娯楽作品を好んで見るだけではないと思います。
おそらくストーリーオブマイライフのような作品を好んで見る傾向は高いと思うし、あそこで振り切った人物を理想的としつつ、演じたシアーシャローナンを信用していると思うのだけど、ラストの終わり方は一度それを越えた事を見たから、物足りなさをもつ人は多いんじゃないかなと感じました。

時代性なのか、このあとソウルへ帰るという作品も見たけど、ピアノのメロディーと草原を歩く姿、遠くに行くあるいは遠くにまで来た、というところがとても符合していたりして、自分自身を見つめ、自分自身を救い、再び歩みを進めるという意味でとてもこの2本をほぼ同時に見たという事はとても大きく感じました。

サウンドトラックもSpotifyで聞きましたがとても良かった。アフターサンのOlivia cotates、park jiha 、Agnes obel、この三人も注目です。
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