snowwhite

マリア 怒りの娘のsnowwhiteのレビュー・感想・評価

マリア 怒りの娘(2022年製作の映画)
3.2
中南米のニカラグア。貧しさ故に、今までに作られた長編映画は僅か数点のみ。そんなニカラグアで女性監督による長編映画が作られた。

まるでドキュメンタリーの様に貧しい現実が描かれる。母子家庭のマリアは誰に対しても反抗的だ。母の言うことも全く聞こうとしない。母はマリアにきつく叱るがマリアを愛していた。しかし母の気持ちはマリアには伝わらない。

母は色んな辛い境遇に耐えながらマリアを育てていたがあるトラブルからマリアを施設に預けて働きに(? 恐らく売春をさせられる様な気がする…)行かざるを得なくなる。

施設に預けられたマリアは母に捨てられた様な気分になるが母はマリアを捨てた訳ではない。やむを得ないのだ。しかしそんなことはマリアは分かってはいない。あくまでも母に反抗的で、言われたこともちっとも守らない。

そもそも母がマリアを置いて働きに行かなければならなくなったのもマリアのせいであるというのに…。母がゴミ集積所の食べ物は持ち帰ってはいけないと何度も言っていたのに、持ち帰って子犬達に与え、全て死んでしまったからだ。母は子犬を売って生活費の足しにしていたのに子犬の引き渡し日の朝、子犬は死んでいたのだ。やって来た引取業者は怒り、母は強姦に耐えなければならなかった。

そんな母を見てもマリアは後悔もしない。マリアは11才なので少しは後悔しそうなものだけど…。4~5才までの子供なら何も分からないだろうけど…。マリアの性格というか言動にどうも違和感があって感情移入も同情も出来なかった。

預けられた施設の経営者夫婦もそこにいた子供達もマリアに優しかったのに彼女はひどい態度しか取らない。正直この子を好きになれなかった。

もう少し主人公のキャラクターをどうにかしておいて欲しかった。

欠点はあるものの良いところもあるとか、欠点だらけだけどどこか憎めなくて明るいとか…。良いところが全く見えない。可愛げもない。

さて、映画はマリアの事を描くだけではない。あの国の現状を鋭く切り取っていた。

預けられた施設の経営者は子供達に労働させてはいるのだが、一方で子供達を育てている。子供に労働させて搾取することは法律で禁じられているので後に経営者の男性は警察に捕まるのだが、この経営者夫婦は悪い人ではない。

親がいない子供や親が育てられなくなった子供を預かって食事を与え育てているのだ。自分達も貧しくて地主に地代が払えなかったりしているのに、夫婦の子供達に接する態度はとても優しくて暖かい。そもそもあんな小さな子供を働かせても対してお金にはならないだろうし、逆にあれだけ沢山の子供達に食事を与えようと思えばお金がかかり搾取どころかマイナスになっているのではと思うぐらいである。施設の夫婦は謂わばボランティアなのだ。地域で皆で助け合って暮らしているのだ。違法だって事だけでは割り切れないのだ。貧しい地域で住んでいるもの達の生活がそこにある。

さて反抗的なマリアは施設でもひどい態度を取り続けるが経営者の妻の手助けで、1人の男の子と心が通うようになる。少しホッとしました。マリアもこれから徐々に心を開いてていくのかと思ったが、そうではなかった。

彼女は母を探しに出て行くのだ。来る日も来る日も母を知りませんかと訪ね歩く日々。ある日の夜、大人になると出会うという猫女に森の中で出あう。猫女は母にそっくりな気がしたが…。

場面切り替わって辺りが明るくなって目が覚めるマリア。そこで映画は終わる。

まさかの夢オチ?
母に会えたということ?母は死んだってこと?
マリアはもう大人になったということ?

何を言いたいのか正直分からない。

貧しさと抱える問題だけは伝わったけどストーリーがないというか…。ドキュメンタリー映画ならこれでもいいとは思うが、もう少し展開が欲しかった。脚本力に課題あり。

マリア役の子役は実は元々エキストラだったそう。元の主役は別の子供だったが、コロナ禍で延期、延期になっている内に大きく成りすぎてしまって役柄に会わなくなったので彼女に変更になったそう。

マリアと母は実は監督と母の関係そっくりなのだそう。監督が主役を代えないといけなくなった時見回すと自分の子供時代にそっくりな子供を見つけたとかで彼女が主役を務めることとなった。反抗的なマリアそのものだった。あれが演技なのか、地なのか分からないがとても上手く演じていたように思う。

もう少しストーリーに捻りがあればもっといい映画になっただろうに少し残念であった。

まだ数点しか長編映画が存在しないというニカラグア。まだまだ発展途上。これからに期待したい。


snowwhite

snowwhite