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マリア 怒りの娘のrebのレビュー・感想・評価

マリア 怒りの娘(2022年製作の映画)
4.0
ニカラグア最大級のゴミ捨て場の近くのバラックで、母親と共にゴミ収集をしながら暮らす11歳のマリア。トラブルが起き、母は知人が営むリサイクル施設にマリアを預け、ひとり街へ出かけていく。
広大なゴミの山。その荒涼たる世界からワラワラと子供たちが現れゴミを漁る。トラックや救急車が無造作に捨てていくゴミに我先に群がる。それはものすごく危険な行為だが、彼らにとっては宝の山であり生活の糧なのだ。
母はマリアに誇りを失わず強く生きることを教える。マリアにとって母はしなやかで強く美しく、離れ離れになってからは、夢の中に黒豹や黒猫となって現れる。
その母の姿はなんとも言えず物悲しい。
周りに心を閉ざし、母への一途な愛を怒りのこもった強い眼差しで表現したアラ・アレハンドラ・メダルの存在感には圧倒された。マリアと似た境遇で育ったという彼女が見せた、吹っ切れたような安らかな表情にグッときた。
内戦や長く続いた独裁政権で、多くの国民が貧困に喘いできた中米ニカラグア。
この国でこれまでに作られた映画はわずか5本しかなく、ニカラグア出身でメキシコで映画を学んだローラ・バウマイスター監督による本作は、初の女性監督による長編映画である。
上映後に監督の登壇があり、17歳の時に識字活動でこの地を訪れ、映画を撮るならここしかないと思ったと話していた。
撮影は順調だったが、やはり本作は政府の怒りを買ってしまい、本国での上映はできていないそうだ。
そしてゴミの問題はニカラグアだけのものではなく、世界全体の問題でもあると語っていた。
貧困による苛酷な現状をこれでもかと包み隠すことなく描きながら、限りなく切なく美しい幻想的な世界で包み込んでくれた本作。素晴らしかった。
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