えっリドリー・スコット監督、ヤバくね?!
「エイリアン」「ブレード・ランナー」
強烈なSF表現とヴィジュアルが印象的な監督です。
そんな監督の持ち味をかなぐり捨てて、違った作風で楽しませてくれました!
まず4Kリマスターの映像が、とても輝いて綺麗でした!
キラキラ煌いて彩度も高く、自然の彩りが鮮やかに目に焼きます!
特に中間色の色彩が華やかで、主人公2人のキャラとマッチしていました!
さてこの映画、少し恐怖を感じました。
この恐怖が、リドリー・スコット監督の凄みの様に感じます。
テルマの性格が、序盤すごく頼りないんです。そのせいで、ルイーズとの関係も悪化してしまいます。
しかし、ある出来事からテルマが奮起して犯罪を犯します。
自分の行動で成功を手にした喜びからか。
そこからテルマは豹変します。
その豹変ぶりに落差を感じて、まず怖さを感じました。
さらにここから、テルマはどんどん輝きを取り戻して行くんです!
輝きを増せば増すほど、引き返せない片道道路を邁進していくのが、皮肉にも如実に伝わってきます。
そしてあのラストに繋がっていきます。
喜びと切なさを同時に味わえる過程に、恐怖を感じました!
それに加えて、しっかりと用意されたカタルシスの要素が、これまた憎い!
夫の束縛、ハメを外し過ぎのしっぺ返し。
序盤では、視聴者にストレスを与えるイベントが用意されています。
テルマの成長と合わせて、払拭するシーンも多いです。
テルマの夫への切り返しや、警官をやり込めたり、トラックの爆破シーン、警官とのカーチェイス!
これらのシーンは非常に痛快で、観ていてスカッとします。
しかしカタルシスを感じれば感じるほど、魔の口がどんどん大きく開いて行くのを、我々は感じます!
この不思議な感覚は、ラース・フォン・トリアー監督のある作品に似た、痛快とやり切れなさを感じました。
抑圧と解放、奔放と成長、共感と痛快。
要素の巧みなバランス力は、もう流石としか言いようがありません。
テルマが覚醒してから、彼女は一度たりとて現状の不満を口にしません。
それどころか、こんな事態になったのにも関わらず、ルイーズに感謝の気持ちを口にします。
その口ぶりからお世辞や上辺の取り繕いでは無い事が伺えます。
本当の自分の気持ちに、出会えたんでしょうね。
ラスト、2人は手を取り合って、自由の向こう側へと駆け抜けていきます。
我々視聴者からも解放されるラストアクションに、もう言葉は出ませんでした。
「あんたは最高ね」
「あんたも最高よ」