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かづゑ的のsnatchのレビュー・感想・評価

かづゑ的(2023年製作の映画)
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私の知らないことは果てしなく…
ハンセン病については顔や身体を変形させ、感染する病気といった激しい差別を受けてきた歴史がある、という事ぐらいしか知らなかった
医師の説明によると実際の感染力は弱く、当時は有効な治療法がなく国の政策として療養所への隔離が行われていたのだった

この作品を通して、かづゑさんという至極魅力的な人に出逢えた😌
宮崎かづゑさんは、日本初の国立療養所として昭和7年に岡山県の瀬戸内海に浮かぶ長島に10歳で入所、今も彼女は暮らしている。現在、ここで暮らす人々は、病いは完治しているが加齢と病気の後遺症のため終の住処として生活している

ドキュメンタリーを観た後すぐに、彼女の手記と語りを記録した著書「長い道」を読んだ。するとまたぐんとかづゑさんに近づき、今はもう知っている人かのように感じる。先に天国へ逝ってしまったアンパンマンのような旦那さんと猫のマリも大好きになった🐟🐈

日本の戦前戦後の農家のある一家族の衣食住や、物不足の中の夫婦の自給自足生活が、今まで観てきた聞いてきた作品や小説より、ありありと浮かんでくる
両親と祖父母が可愛がってきた幼い娘が、らい病だと分かった時からの家族の切ない愛とその途切れることのない情
当時のらい病患者は、家族の中でさえも、孤独の存在となり縁を切らざるをえない人も多かったから、この家族の存在がかづゑさんの支柱となっていたことがよくわかる

病いのため小学校にも殆ど通えなかったかづゑさん、独りで故郷から遠く離れたこの療養所に来て、初めて人への不信や恐怖も知るが、それを遥かに超える信頼を見たり受けとる
隔離された療養所にイメージする私の偏見がかなり大きかったのもわかった

ここに来るしかなかった人はかづゑさんを含め死にたいと思ったこともあるのが現実だっただろう
でも、生きていたから、患者同士、医師や看護師、介護士、職員と繋がり、気づいたこともあり歳と共に考え方が変わっていった
子どもを産むか産まないかについても、彼女夫婦の考え方を知った

かづゑさんは、発見した人の名を付けたハンセン病とは言わずに、らいと呼ぶ
「皆さまと大きく違う人生でもない。らい患者だけが特別じゃない」
好奇心が強く、先ずは教えてもらい自分でゆっくりでもいい やってみようという生き方
また「らいを突き放して『お前さん嫌いだ』と思うことは、なぜかない」と人生を総括するかづゑさん
自分にとっては、これから後半の自分の人生のそばに置きたくなる大切な一冊となりました
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