みんと

これで三度目のみんとのレビュー・感想・評価

これで三度目(1952年製作の映画)
4.2
フランスを代表する作家サッシャ・ギトリ監督のコメディ。
名前だけは聞いたことがあるけど初鑑賞。

舞台俳優のジャン(サッシャ・ギトリ)は客席にいたテレーズに一目惚れ。彼女に声をかけ2人は意気投合するが、テレーズには宝石商の夫アンリがいた。アンリはこれ迄に2人の妻に浮気され離婚しており、3人目の妻テレーズの不倫は阻止しようと試みるのだった……。

ほとんどのギトリ映画が冒頭で作品のスタッフ・キャストの紹介シーンで始まるらしく、それはギトリのそれぞれの仕事に対するリスペクトを示していると言う。
初鑑賞ゆえ、一瞬戸惑ったものの映画作りのドキュメンタリー的で興味深く見入った。作者、主演俳優、演出家の三役を務めるギトリが三度、車から現れるシーンはさすがに笑えたけど。

妻の2度の離婚理由が驚き。2度目の相手は自分と瓜二つの相手と言うのが、コメディチックでいて、実は自身の浮気願望の表れであり、分身的存在と言うのが面白い。

更に興味深く印象的なのが、ジャンとテレーズの誰もいないナイトクラブでのシーン。楽隊や客たちをひとりふたりと召喚していくシーンのトリック撮影。
束の間の非現実的な世界がワクワク楽しくもあり、演じること、恋することが映画にも通じる躍動の世界として見事に表現されていた。

いわゆる通俗的な不倫映画を面白可笑しく描いているようでいて、実は人間が人間である以上、最も人間らしい一面でもあり、しょうがないなぁ…と微笑ましく滑稽にも思える描き方が絶妙。
なんと言っても不思議と、いや強引に?納得させられるワードセンスに唸る。

美しい場所は再訪すべからず
素晴らしい絵や
心を打つ本も2度目は
印象が薄まる

考え抜いた末だ
僕は色気がないし
女性にモテる男じゃない
苦しむのはイヤだ
先に浮気したい
楽しむわけでもない
言ってみれば予防策だ
3度目はごめんだ

不幸を予感し
未来に幸せの種をまいた
…私を取り置きした


粋さの意味では、感覚的にどことなくルビッチの『天使』を鑑賞後の後味に似てる。

そして、またひとり脚フェチ監督が?…笑
みんと

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