おかちゃん

坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たちのおかちゃんのレビュー・感想・評価

3.0
団塊世代の性なのか?
彼のように著名で成功してれば、世間と適当な距離をとる生き方も在るだろう。しかし、彼は其が出来ない…。
そして人と繋がっていると本当に嬉しそう。様々な企画でいろんなタイプの人達と話をする時、非常に嬉しそうな表情をする。
一方、孤高の芸術家としてPlayする時は、凄く厳しい表情をする(ある意味で当たり前)。

▪️世の中に団塊世代と呼ばれる人達が大勢幅を効かせている。しかし、大抵は転向したり、市井の中に紛れこんだり。所謂「全共闘」は、60年安保運動の幻影を追いながら、実は其処まで政治的立ち位置を定めない運動?否、集合体だった。だから、問題点➡️即政治活動という図式にはならない。様々な手段で、その核心を晒そうとする。そしてまた、そこに至るまで彼らにも「運動の挫折感」は、確かにあった。

▪️芸術家と言えば、彼・教授の生き方にも芸術家然としたストイックさが現れている。ある大物歌手が語っていた言葉を思い出した。「頂点を極めた者は、そこで満足する事は出来ない。また、次の頂が見えて来る…」彼も同じだったのだろう。

▪️彼もまた、団塊世代の最後期にあたる。あれから時が経ち、筑紫哲也も清志郎も亡くなった(幸宏も)。彼を突き動かしていたのは、実はこのような人達との繋がりと人柄だったのだろう。

▪️映画としては、わりと平坦なドキュ作品。過去のTBSのニュース映像等を淡々と時系列的に並べて行く(これなら、地上波の深夜時間帯の番組で流せるだろうに…。これが出来ないのも今の放送業界の問題か?)。おそらく、彼自身も大仰しく捉えられるのを、自虐的に照れ隠しし嫌がるだろう。しかし、そんな彼がどんどん深みに囚われて行く事に、何故か尊敬と畏敬の念を抱かざるを得ない。

そして彼が投げ掛けた問題は、未だに解決されていない。私と言えば、今は「人新世」を見定めている。