うめ

ア・フュー・グッドメンのうめのレビュー・感想・評価

ア・フュー・グッドメン(1992年製作の映画)
3.5
 ジャック・ニコルソン目当てで鑑賞。海軍基地で起きた事件の真相を明らかにする様子やその葛藤を描く法廷ドラマ。監督は『スタンド・バイ・ミー』や『ミザリー』のロブ・ライナー。

 今作は『ソーシャル・ネットワーク』や『スティーブ・ジョブズ』の脚本を手掛けたアーロン・ソーキンによる戯曲の映画化で、アーロン・ソーキン自身が脚本を書いている。それに気がついて合点がいった。「どおりで台詞が多い訳だ」と。『ソーシャル・ネットワーク』ほどではないのだが、今作も俳優たちに語らせる、語らせる。後半の法廷シーンなど語らせるのにもってこいの場ではないか。一人の人が語り出したら止まらないので、会話を追って自分で話を整理せねばならず、またそうしたシーンが何度もやってくるので、少し辟易した。だが、ストーリー展開はよく出来たものになっていて、飽きること無く観ることができた。

 俳優に関してだが…う〜ん、トム・クルーズは少し役柄に合っていないような気がした。おそらく私があまりトム・クルーズが出演している作品を観ていないからという理由もあるだろうが、終始トム・クルーズの「プレイボーイ感」が抜け切れていないように見えて、法廷で繰り広げられる重いテーマにうまく乗れていなかった。それに反して、やはりジャック・ニコルソンの貫禄がすごい。あの威圧感…彼が登場するシーンは見物だろう。その他、キーファー・サザーランドにケヴィン・ベーコン、デミ・ムーアなどキャストが豪華なので演技についても退屈を感じさせない出来になっている。

 今作で印象的だったのは、度々映し出される海兵隊戦争記念碑である。海兵隊の戦没者のために制作されたその彫像とその上ではためく星条旗は、誇り高きアメリカ海兵隊の、アメリカ全体の理想を示しているように見える。だが、『父親たちの星条旗』をご覧になった方ならその像の元となった写真の真実をご存知だろうが、それを考えると、その像のシーンは皮肉にも見える。アメリカの理想と現実をどちらも表しているのだ。今回は軍部内部の問題だけが採り上げられているが、それ以上のものがまだあることを記念碑のシーンは教えてくれたような気がした。

 できれば、もう少しそれぞれの立場や考えを(台詞だけでなくそれ以外でも)明確に描いてくれると、わかりやすかったかなとは思うが、それでも俳優の演技に助けられてなかなか見応えのある作品に仕上がっている。
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