もりぞー

ア・フュー・グッドメンのもりぞーのレビュー・感想・評価

ア・フュー・グッドメン(1992年製作の映画)
3.8
「今観るべきHOTな映画」
連日日大アメフト部の問題がニュースやワイドショーを賑わせていますが、この問題と酷似したストーリーの映画が「ア・フュー・グッドメン」。トム・クルーズ主演で1992年に公開された作品です。
ちょっと細部はうろ覚えですが、キューバとの国境近くのアメリカ軍基地が舞台。そこで新入りの若い兵士が殺されます。当初は同じ基地内の兵士同士のいざこざで誤って殺されたと報告され、トム・クルーズ演じる軍内部の弁護士が最初は簡単に検事との交渉で決着をつけようとします。そこに事件に疑問を持つデミムーアが「マジメにやれ!」と一喝。被疑者の2名の若い兵士を尋問するうちにどうやらコトはそう単純ではないとトムも気付きます。以下に日大アメフト部の問題とどうリンクするのかを上げてみます。

1.閉鎖された組織を支配する独裁者の存在
 映画では軍の基地を取り仕切る大佐が登場します。軍服には勲章がジャラジャラ付いていて軍では相当な権力者であることが示唆されています。ジャック・ニコルソン演じるこの大佐が内田監督ですね。

2.独裁者を畏怖する上官の存在
 映画では大佐が間違っていると内心思っている上官も登場しますが、大佐を怖れ何もできません。変わって野心満々の何なら自分大佐の一番弟子です!的な上官が大佐の意のままに行動します。キーファーサザーランド演じるこの上官が井上コーチです。

3.殺人を犯した兵士2名の心理
 若い兵士を殺した2名の兵士。彼らは尋問に対して素直に事実を述べます。そこに罪の意識は微塵も感じられません。弁護士のトムはここに違和感を感じます。彼らが「罪の意識」を感じていない点がこの映画の根幹にかかわる部分です。当該選手の宮川君は「罪の意識」を感じて良心の呵責に悩まされますが、なぜコトを起こしてしまったかの状況が映画とダブります。

4.コードR
 これがこの映画の根幹です。コードRとは何か。訓練についていけず部隊の移動を嘆願した腰抜けに対して私的制裁を加えよ、という不文律です。なぜ、殺人を犯した兵士達が「罪の意識」を感じなかったのか。それは上官からの命令に従っただけで、それが部隊を存続させるために必要な行為であると教育され、もし命令に従わなかった場合は除隊させられることを怖れている、という理由です。彼らの意識は、「人を殺す」という社会通念的な倫理悪よりも、組織の命令に背くということの方が「悪」であり「恐怖」なのです。

5.私的制裁命令の有無
 映画の焦点は、「この殺人(死亡事故)に部隊、大佐の指示があったのかどうか」です。コードRは組織内の命令としてどうやら存在はしているようだが、不文律のため実際に大佐が命令したという証拠がありません。大佐はコードRの存在を否定し、リンチの指示などないと証言し続けます。実際(映画の中で)コードRは会話の文脈のなかで発動されるため、具体的な指示はありません。「弱音を吐いて、隊の移動を申し出ている兵士がいる」→「(大佐)そういうヤツの対処は分かっているよな?」→「(上官)御意」→「コードR発動」という流れです。

6.映画のラスト
 殺人を犯した2人の兵士に判決が下され、2名とも軍の除隊を命じられます。若い白人の兵士は「なんで命令に従って部隊のためにやったことなのに除隊になるるんだ!」と激昂します。一方先輩の黒人兵士は、命令に従うことは絶対で、正しいことだと信じているが、人を殺めてしまったことは重大な過ちだったと静かに判決を受け入れます。

大佐がどうなったかは映画をご覧になることをお勧めします。
また内田監督は特定の選手をターゲットにして、徹底的に精神的に追い詰める指導法を行っていたと報道されています。その過酷でギリギリの状況を乗り越えることで成長できると信じている様はさながら映画「セッション」の様です。こちらの映画も併せてご覧いただけると今回の日大アメフト部の問題がより鮮明さを増すことでしょう。
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