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トラペジウムのウォシのレビュー・感想・評価

トラペジウム(2024年製作の映画)
3.6
原作者が元アイドルという事ですが恥ずかしながらどなたか存じ上げず、そもそも乃木坂自体特に知らない。
何ならアイドル自体に興味を持った事がなく、そうゆう題材のアニメも今まで観た事がない。

そんな完全フラットな状態で鑑賞してみた本作。
内容的にアイドルものとしてこれは王道だったのか型破りだったのかは分からないけれど、中々に興味深く楽しめました。

メンバーを集める為、各学校の美少女に声をかけ仲良くなる。
でもそこに友情はなく「こう言えば相手は喜ぶだろう」という計算での会話。
興味ない話題だけど合わせてあげてるのが丸分かりの会話なのでめちゃくちゃ居心地が悪い。
側から見たら和気藹々としたシーンだが、観る側にとっては不気味に映る。
(別に映画が好きでもない人から振られる「おすすめの映画ある?」並みに嫌な時間です…)

集められた3人もお嬢様系・ロリ系・清楚系としっかりバランス良くなってるのも、アニメ的なあるあるに見えて計算で選ばれてる背景があるのでこれまた不気味に感じる。

そんな彼女らは「アイドルになろう」と声かけられて集まったわけではなく、ただ友達になりたかったという動機で集まっただけなので実際に過酷なアイドル活動するようになると観てて心苦しくなる…

はっきり言って主人公はめちゃくちゃ嫌な奴です。
行動原理は全部「自分がアイドルになるため」で他人は売れるきっかけを作る為の道具として見る。
アイドルになりたい理由も要約するとチヤホヤされたいという自己中心的なもの。
「自分は嫌な奴だよね…」と母親に聞くシーンがあるがその回答がとても良かった。
「そんな事ないよ」と甘やかさなかったのは好感。

結局計算だけではアイドルにはなれない。
アイドルに限らず夢を叶えるには人間力が求められる。
めちゃくちゃ経歴すごいけどちょっと売れたらすぐ独立しそうな人と、経歴は地味だけど長く勤めて実績を作ってくれそうな人。
どちらを雇いたいかという話に通づるのかも。
前述のように3人はそれぞれどうゆう系のキャラか見えてくるのに対し、主人公はどれ系なのかあまり思いつかない。
それだけ中身やキャラがない人間だったという事なのでしょう…

そんな主人公に振り回されたメンバー3人も不憫な目には遭うが、そうゆう異常な状況に巻き込まれたからこそ得られた知見というのもある。
良くも悪くも人生の転換期というのは、己の努力以上に何かヤバい人間に絡まれた時を意味するのだと考えさせられます。

テンポが早すぎてドラマの厚みに欠ける部分はあるが、いろいろ長く語りたくなる内容でした。
アイドルという華やかな舞台とは裏腹にしっとり落ち着いたトーンで展開されるのでアイドル慣れしてない自分でも楽しめたので良かったです。

主人公の性格の悪さを筆頭に賛否が分かれてますが、それを理由に低評価下すのは早計かなと思います。
極端な言い方すると本作はダークヒーロー映画に近いタイプなのかなと。

オープニングは映像も楽曲もめちゃくちゃカッコよくて、その部分だけなら今年観た映画内の映像の中で上位に来てます。
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