さらしな

次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路のさらしなのレビュー・感想・評価

3.8
今までの作品に比べて、シリアスな部分がきっちり描かれている今作。
前半は清水でのお祭りシーンでほっこり。次郎長とお蝶さんのラブラブなやり取りにニヤニヤして、そんな二人のことが大好きな一家のみんなにニヤニヤして、酒を飲んで昔語りをするだけのシーンが幸せに満ち溢れていて、見ているこっちまで幸せな気分になる。一方、鬼吉と綱五郎はお千ちゃんに振られて酒屋で飲んだくれている。この二人のお千ちゃんへの恋はコメディチックに描かれてきたけど、お千ちゃんの幸せを一番に考えられるあたり、本当に好きだったんだなぁと、少し切なくもなり。
しかし、平和な日々は続かず、後半は一転、抗争シーンがメインとなる。お蝶さんの平穏な生活のために、命懸けで敵地に潜入するお仲さんの胆力には本当に恐れ入る。だが、お仲さんは敵に捕まってしまい、助けるために次郎長一家は甲州へと殴り込みに行く。今までも戦いは何度も描かれてきたけれど、明確に血や怪我の描写があったのは何気に初?(いや、三五郎を追って来た女の子が巻き込まれて亡くなったことはあったけど)ではないかと。相手方の親分を殺したことも明示され、石松と豚松が大怪我を負って、本当にこの人たちはずっと命懸けで戦っていて、これからも戦わなければいけないのか、と再認識。この物語に抱いてきた明るく朗らかなイメージとは一転、この人たちはあくまでもアウトローな世界の住人なんだなぁと思いました。
いっそ、一家で農業とか漁業とかで生計を立てて平和に和やかに末永くみんなで仲良く暮らしてほしいけど、そもそも普通の生活からドロップアウトした人たちの集まりだから、それも無理な話なんだろうなぁ、と思うと少しかなしい。
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