コマミー

ザ・キッチンのコマミーのレビュー・感想・評価

ザ・キッチン(2023年製作の映画)
3.3
【現実の人種格差とSF】




「ゲットアウト」や「ノープ」で知られる"ダニエル・カルーヤ"の"初監督作品"という事で、陰ながら期待していた作品だった。しかも"格差が激しい近未来"を描いた作品という事なので、割と好きな要素が入っていたので期待値は高まったのだが……

残念ながら、期待ほどの作品ではなかった。


まずいい点から話すと、本作で描かれる"父子間の関係の構築"を描いた作品としては、まずまずの面白さで見応えの補填はできてたのかなと感じた。聞くところによると、本作は"カルーヤの実際の生い立ちと重ねて"作った作品だという事らしいのだ。そして本作の舞台は、いわゆるダニエル・カルーヤの両親の生地"ウガンダ"と"イギリス"の関係そのものである事に気づいたら、中々深い作品なのだ。
カルーヤも滞在ビザの規制によって、父親と中々会えない時間が多かったらしく、まさに本作で描かれる親子の関係と重なっており、カルーヤの半自伝で間違いなかった。

しかしながら、そこまで自分の生い立ちについて映画を通して語りたいならば、本作は結果"力不足"なのではと感じてしまった。こんな事言ったら元も子もないかもしれないが、別に"SFディストピア"にしなくても良いような気がしてしまった。
ちょくちょく説明不足なシーンが多くて、背景に対する説明があまりされておらず、「?」なシーンも多かった。普通に名前を変えてヒューマンドラマにすれば良かったのではないか?黒人差別をドラマ風に伝えたいのならば、無理してSFにする必要はないと感じてしまった。

あと、登場人物もあまり印象に残らない…ラストに進むにつれて、それが改善されるのかと思えば、ずーとダラけたまま…非常にもったいない部分が多い社会派映画だった。

せっかく重厚で良いテーマを持ってるのに…。

カルーヤも俳優として素晴らしいと感じていたので、それを考えると残念な作品だった。
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