けー

スリー・キングスのけーのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・キングス(1999年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とりあえず頭上から爆弾を落としまくるのはどうかしているという認識から始めてみるのはどうだろう。


湾岸戦争が終わったとの知らせに浮かれまくる駐屯部隊。砂漠のど真ん中で戦闘も娯楽もない状態で全員が退屈しきっていたのだ。

パーティではしゃぎまくった翌日、捕虜となったイラク軍の隊員から武器と上着を剥ぎ取る任務を遂行中だったトロイとコンラッドは地図を見つける。

お宝の地図に違いないと撤収までの空き時間に地図に示されている場所に向かうことにする。その噂はすぐに広まり、トロイとコンラッドに加えて特殊部隊で実戦経験もあるアーチと軍曹のチーフが加わる。


砂漠のど真ん中で乱痴気騒ぎなUS陸軍の皆さん。

規律も風紀もどこ吹く風で騒ぐ有様に、なんとなく「あんたら人ん家で何やってんだ....」という想いが頭をよぎらなくもなく。

お宝の地図はクェートから奪われた金塊のありかを示しているに違いないと、表向きは奪われた金塊をクェートに返すため、本音はくすねて除隊したあとの生活資金の足しにしようと浮かれ気分で地図の示す場所に向かう。

アメリカとイラクが休戦協定を結んだことで、アメリカの呼びかけでフセインに反旗を翻した反政府軍側が次々と粛清されていくのを目の当たりにしても手が出せない事態に直面し、次第に3人は居心地の悪さを感じるようになる。

自由と民主主義のために、人々を独裁者から解放するためにという大義名分を掲げていることの偽善は、イラク軍がクェートから奪ったと思しき家電の山の中にあったTVがロドニー・キングが複数の警官に殴られている場面が映っていることでも示される。

戦争に介入してきたのはあくまでも「石油」のためで、そこにすむ人々のことなど気にもかけていない。自由と民主主義を謳うなら独裁者と戦う反政府の人たちをこんなふうに見捨てていいはずはないという葛藤の中に否応なく放り込まれた3人。

一体なんのために命をかけるのか。

命をかけて戦う価値のある瞬間というのはどういうことなのか。

ブラック・コメディタッチから一転シリアスドラマになだれ込む。

唐突にモラルコンパスが反転し、生死の危機に瀕する状況で物事の選択を迫られる。

今まで揺るぐことないと思い込んでいたモラルコンパスがグルグルと回る中、自分や他人の命に関わる選択や決断をするプレッシャーに心が壊れるのもなんの不思議もない。



「I can't breath.」



ここまで事態が悪化する前にどこかでどうにか回避する術はなかったのか。

事態が悪化する前にどこかでどうにか回避する術は本当に見つけることはできないのか。

それとも所詮地獄の沙汰も金次第と達観すべきなのか。

いや、そんな身もふたも....😅

けー

けー