柏エシディシ

スリー・キングスの柏エシディシのレビュー・感想・評価

スリー・キングス(1999年製作の映画)
4.0
自分にとっては、はじめましてデビッドOラッセル作品。公開時に映画館で観た。
んで、「アムステルダム」予習復習の為久しぶりに観たけど…やっぱ抜群に面白い。
プロットとしてはお馴染みの「戦争のどさくさ紛れに一攫千金を狙う」という定型パターンではじまり、911以前のアメリカの能天気さを象徴する狂騒は戦争コメディの様相だが、後半、ストーリーは思わぬ方向へ進んでいく。
タランティーノ、フィンチャー以降を感じさせる演出のキレ味も見どころだが、やはり脚本と軽妙な台詞の応酬こそがラッセル作品の肝だとこの初期作品からも判る。
ヘンテコなお話が気づけば思い掛けない情感を引き摺る終幕に向かうこの映画に、スパイク・ジョーンズが俳優として参加しているというのも、この後の彼の監督作との類似点を思うと面白い。本作公開は「マルコヴィッチの穴」の同年だが。
編集のテンポの軽快さもあって、20年の時代の経過を全く感じなかったのだが、当時は衝撃的で可笑しかった「紛争の只中なのに衛星電話で平和なアメリカの自宅に繋がる」シーンが、"古い"描写になっているのは感慨深かった。
世界との距離感がネットの進化で一気に変化していることを改めて実感する。
そしてだからこそ、今なお世界から無くならない紛争や難民達の苦難の事も想起させ、本作の物語が未だなおこの時代にも有効であることに複雑な感情も湧く。
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