イスケ

スリー・キングスのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・キングス(1999年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「ブッシュが反フセインを支持。
 挙句に見捨てた。それで虐殺だ。」

前半のトレジャーハンティングコメディから転調した後は、この梯子外しの酷さを物語り続けます。

かつてのキューブリックの「フルメタル・ジャケット」では、いっぱしの大人を一度赤ん坊状態に戻すことで戦闘マシンとして洗脳していく再教育ぶりが描かれていました。

ベトナム戦争時と現在とでは軍教育の状況も異なるでしょうが、本作のラストシーンで国境を超えさせることを妨害する米兵たちの様子に迷いは見られない。既に環境に染まっているんですよね。

軍規に沿わないと懲罰を下されるという恐れよりも、ただただ「これが正義だ」と言わんばかりに。

その点、アーチーたちは軍規を乱すはみ出し者だったおかげで軍には染まりきらず、幸運にも人としての心を取り戻せたと言えるのかもしれません。ラッキーでした。

おそらくシャバではアーチーのような人物は他の隊員より遥かに危険を孕んでると思います。


イラン側へ渡っていく人々を見つめる三人。
手を上げるアミールと、それに応える姿。
心を打つものがあった。

最後に彼らのその後の人生について説明されますが三人とも幸せに暮らせている様子。
戦地から戻った人間の多くが平凡な毎日にフィットすることが難しくなる中、彼らがうまく溶け込めているところは軍に染まっていなかったことの証明になっている気がします。


当然ながら、このことを彼らの性格によるものだと片付けるには無理がありますよね。

アミールとその娘との繋がりを起点に、イラクの村人と交流を持ったことを抜きにしてこの展開は無かったわけですから。

やはり「イラク人」という大きな括りではなく、個人と個人として感情を交わしながら繋がれる環境が大切なんだと改めて感じます。

自分の周りでも、嫌韓だった友人に韓国人の友達ができた途端、韓国を擁護する発言が目立つようになったこともあったなw


自分はあまりデヴィッド・O・ラッセルの作品にハマらないのが悲しいところではありますが、「死ぬまでに観たい1001本」にも選出されていて、評論家ウケも非常に高いようですね。

トロイが石油を飲まされるという、いささか直接的な表現もありましたが、アメリカで本作が公開されたのが1999年。
その2年後に同時多発テロ、その2年後にイラク戦争というタイミングがなんとも。

軍や政府への不信感と共に、ラッセルの着眼点の良さを感じていたアメリカ人は結構多かったのかもしれない。
イスケ

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