ーcoyolyー

ハーフェズ ペルシャの詩(うた)のーcoyolyーのレビュー・感想・評価

3.7
イラン映画だ。まごうことなきイラン映画。そして変態だ。まごうことなき変態。

麻生久美子の撮られ方が大江健三郎文学的な変態の方向性でしたね。
多分この監督は麻生久美子にろくに演技指導をしていない。通訳がちゃんとついていたのかすらも怪しい。常に状況が全くわからず不安で心許なくて今にも泣き出しそうに困惑している麻生久美子がそこにいて、たどたどしい異国の言葉を話している様子をにまにま映し取っている。自分の母語を強引に喋らせて。そうやって彼の思う美しさを極限にまで引き上げて映し取っている。変態だ。

イランにおける金魚の存在感が私よくわからなくて、でもイラン映画観てると頻繁に出てくるイメージあるから何らかの意味があるんだよね?この国における金魚とは何なのだろう?何の象徴なのだろう?

私たちがこの映画を観て感じることは西欧の人が大江健三郎文学を読んで感じることに通じるのかもしれないなと思うとちょっと今観れて良かったのかもしれない。

私は彼の訃報を消費できなくて何も言えなくなっていて、ここまで気軽に何かを語ることができなくなってしまうほどの存在の大きさを今まで認識してなくて、ただただそのことに驚いている現在で、そういう時にそういう自分にこの映画は沁みた。

そういうことなのだと思う。

パンは届くべき場所に届いた。
このくだり良かったな。何かを失った時にそう思える思考回路を私も備えるようにしたい。
ーcoyolyー

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