歌うしらみがおりました

水深ゼロメートルからの歌うしらみがおりましたのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
3.0
『ブレックファスト・クラブ』みたいな理由で集められたふたりと水泳部ふたりによる『ブレックファスト・クラブ』とは微妙に異なる命題が議論されるワンシチュエーションドラマ。

水のないプールが舞台という空間的な制約がかかっている中で、単調な会話劇で終わらせないぞという気概を感じた。
最初に仲吉玲亜が登場するシーンのロングショットからして、これは映画であるという矜持を感じるし、仲吉玲亜が阿波おどりの練習を始めると、奥から清田みくりが登場してなんか叫んで水のないプールに飛び降りるのもエクスタシー。

ちゃんと言外の所作ややりとりでそれぞれのキャラクターや関係性を示しているのも好感が持てる。
例えば清田みくりと濵尾咲綺との会話を切り返しで捉えているシーンで、清田みくりの後ろで仲吉玲亜が真面目に掃除しているのだが、清田みくり側のカットになるたびにちゃんと掃除が進行していて最終的には溜めた砂をバケツに入れることで、彼女の健気さが見て取れる。
或いは、野球部のマネージャーが運ぶ大量のペットボトルのポカリを仲吉玲亜が一緒に持ってやる件、いつの間にか仲吉玲亜が殆ど持ってあげてて笑った。

仲吉玲亜がプールの外側で誰かと二人で歩くシーンが二度あるのだが、野球部のマネージャーと歩く時は濵尾咲綺の、水泳部の元部長と歩く時は清田みくりの、それぞれプールでウダウダやってた二人の自分が知らなかった一面や自分以外からの視線を知ることになるっていうのは巧いつくりだと思った。この二つのシーンを対になるように同じ撮り方をしているのも知性を感じる。

時折センチメンタルに振りすぎたカットや青臭すぎる意識高い系の叫びが顔を出すけど、そういう脚本なんだから、まあしょうがない。…と、思っていたが、クライマックスで薄っぺらいテーマの棒立ち絶叫ディベート大会が始まっちゃったからそれはもうゲンナリ。あれさえなければもうちょっと積極的に好きって言えたのになぁ。

あ、あとあれだ。タイトルバックがお洒落すぎる。多分あれは今年ベストタイトルバック。