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水深ゼロメートルからのKHのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
4.0
水深ゼロメートル(水のないプール)に集まった4人女子高校生の会話劇。
個々としては仲良くても、普段の教室では交わらないであろう4人が、なぜ水のないプールに集まっているのか(水の張ったプールで泳げないのか)が徐々に明らかになる。
演劇が原作であるため画の変化が少なく退屈だと言ってる人が多いが、3人(または4人)の配置が遠近的で三角形の構造になっていたり割と工夫されていてるのが伝わった。
野球部を支える女子マネージャー、野球部の練習によって砂が溜まっていくプールなど、画の変化が制限されているからこそ記号的なシーンが多いのは面白いと思う。
内容的には「男だから」「女だから」が多用されメイク熱心な生徒、「らしさ」を拒む生徒、中学の頃までは水泳で勝っていたはずの男子に負けて拗らせた生徒、「女の敵は女」を体現した教師など様々な角度から語られる。
みんな言っていることは正しいけれど、どこか不完全だった。大切なのはこの映画は何かメッセージを伝えてるのではなく、あくまでノーサイドだということ。
どちらかのサイドに立って共感したり非難したりするのはこの映画の本望でないと思うし、実際にはどの感情も持ち合わせていて、少しづつ折り合いをつけてゆくものだと思う。

この映画の好きなところは急に真面目な会話になったと思えば、次の瞬間緊張が解けおどけたりと、短い間で次々と変わる女子高生の会話劇だと思う。
同じ制服を着ている高校生たちが、色んなことに反発して悩んで悶々として答えを探し求める姿(もちろん大人も答えを持ち合わせてない)の一瞬をカメラに押さえた作品としてはいい作品だと思う。
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