sakura

水深ゼロメートルからのsakuraのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
4.4
終わり方がかっっっっこよすぎて鳥肌たった。

自分語りになるけれど、仙台生まれ仙台育ち仙台在住で、小学校からやっていた“すずめ踊り”。 上手な祭連だったし、大賞獲ってたし、誇りだったけど、尖りたい年頃に「伝統」に迎合するのが恥ずかしく思えて辞めてしまった。
今、すずめを見て心からかっこいいと思えるのは、あのとき辞めたことへの後悔があるからかもしれない、とずっと思っている。 もちろん辞めた理由は、恥ずかしかっただけではないけれど。

だから終始、ミクが「踊って」と言われるのが本当に87分中85分不愉快で、誇りがあるからこそこんなところで中途半端に踊ってどうせ100%を見せることはできず(衣装とか音とか、阿波なら人数も)、冷やかしを覆すほどのものを出せないこともわかっているミクの気持ちが痛いほどわかって、ミクと一緒にイラついてた。

それを、あのラストワンショットで、100%にはならない不足だらけのシチュエーションを、そんなのなんでもないことだと思わせるほどに自分のものにしたミクはすごいし、ミクを作ったこの作品はすごい。


もちろん終わり方以外にもいいところはたくさんあって、これは観客の見ている世界によっては冗長かもと思うところもあったけど、それは見る側の世界に向ける眼差しの解像度の問題だと思うし、総じてとてもよかった。

わたしはミクの論理を持ちながら、ココロと大差ない行動をしている気がした。

山本が唯一「先生」としての自分を脱ぎ捨てるシーンが、いちばん苦しかったな。だって、あのプールにいる4人のJK(あえて作中の言い方)が持つ世の中への不満は、山本やわたしたちの年代になってもずっと変わらず存在し続ける。そしてその不満をぶちまけたり、同じ不満への対処が異なる女同士でぶつかったりしている間も、彼女たちを、わたしたちをそうさせている社会を牽引する男たちは……、声だけが聞こえてくる野球部がその答え。 しんどい。 わたしと山本もしんどいし彼女たちもしんどい。
全部全部、どうやったら終わりにできるんだろうか、と考えてしまった。

砂も無くならないし、答えも出ない
sakura

sakura