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ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争のmstashdのレビュー・感想・評価

4.5
ゴダールの遺言。驚愕の作品だった。
死の直前まで、自らで書き、声を残し、思想を紡ぐ。その肉声はたどたどしいにも関わらず。
最期の時を迎えるまで、これほど執拗に表現ができるものなのか。そこには、メランコリーもノスタルジーもない。自らの人生をまとめようとする後ろ向きの姿勢もない。もはやこれは狂気とも言えるものなのかもしれない。
心が震えた。身震いがした。

ゴダールの作品は、まさに革命と闘争そのものだった。
最期の作品のタイトルに「奇妙な戦争」とつけられている。
作品中にもロシアを批判する台詞もあり、この、革命でも闘争でもないロシアによる戦争を許しがたいものとして、侮蔑をこめて「奇妙な戦争」と呼んだのではないだろうか。

抵抗するミューズとして、カルロッタを描き、最後にハンナ•アーレントの名で唐突に終わる。
その唐突さをもって別れを告げる。いつも我々を煙にまく。極めてゴダールらしい。
一つの時代の終わりを痛感した。
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