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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のtorumanのレビュー・感想・評価

4.3
「スクリーンに映し出される登場人物たちを愛してほしい。そして彼らが破滅していったように、あなたたちも破滅してほしい。」 タル・ベーラ

タル・ベーラ監督の438分の寓話『サタンタンゴ』についで発表された146分の黙示録。
共通テーマは"共同体の変容"
共通スタイルは"長回し""モノクローム"

ハンガリーの田舎町を舞台に、老音楽家エステルの世話をする青年ヤーノシュ。
見せ物の鯨の到着とともに、暴徒化していく民衆によって、彼の日常が破壊されていく様子を描きます。

37カットの長回し映像は、動く写真集のように印象的です。

・鯨を乗せたトレーラーが、建物壁に影を映すドイツ表現主義のような美しさ
・酔っ払い達が太陽・地球・月の天体の動きを演じる素っ頓狂な可笑しさ
・暴徒が黙々と行進する無機質の塊のような不気味さ
・暴徒が病院から出て行く様子の、立体的な映像の美しさ。

同じ長回しの作家であるテオ・アンゲロプロスとは全く違う、荒々くて、不穏で、アナーキーで、いつの時代に観ても新しく感じる作品。

繰り返し流れるテーマ曲と長回し映像にトリップしたような体験でした。

全編カット忘れる事はないですが、またいつか再見すると思います。
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