ririmica

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のririmicaのレビュー・感想・評価

3.9
圧倒的な手触りがあって、余韻がじっとりと残っている。ストーリーテリングよりもエクスペリメンタル。共感よりも体感を強く感じられた。

『サタンタンゴ』を初めて見た時、これほどの長回しが使われた作品を見るのが初めてで新鮮な体験だった。では長回しにどんな価値があるのか?というところは、今回この映画を通して教わったような気がする。
現代のエンターテインメントの逆をゆき、忘れ去られていた映画、フィルムにおける「真実を映し出す」側面が色濃く表現されていると思った。カットによる錯覚によって物語を紡ぐのでなく、フィルムの長回しによって、ここに偽りなし、ということが現れる。フィクションではなく、その出来事が、ここに存在していると感じさせられる。

人が死んだ時に沸き起こる感情はただの悲しみか?寂しさか?と問われた時、自分はまず困惑が来るはずだと思っており、この映画は私が家族を亡くしたときと同じ感情を沸き起こさせた。そこに残るのは涙ではなくモクモクとあらわれる心のモヤだった。

物語に関しては、自分は学がないので時代背景や行動の意図がわかってなく、イマイチピンと来てないところもあるのでこれからパンフレットを読もうと思います。

予告で見た監督のコメントに、度肝を抜かれます。登場人物たちのことを愛せるだろうか?そして、知らず知らずのうち、私はもしかしたら一緒に破滅したのかもしれない、と。
ririmica

ririmica