ブラウンソースハンバーグ師匠

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

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冒頭から、「ヤーノシュ!おそかったな!」みたいな場の空気が変わるホープ感と言い、宇宙ごっこに付き合わされるおっちゃん達の満更でもない表情と言い、「ふわぁ~、このままおっちゃんコミュニティと主人公とのブラザーフッドが展開されねえかなあ~」と思っていたら、案の定そんな映画じゃなかったですね。

「ああ~!あのサタンタンゴの人……」という感覚でこの映画を鑑賞してしまったがために、わたしの尿意がサタンタンゴ仕様になってしまったようで、それはつまりどういうことかと言うと、休憩ありきの尿意になったということで、膀胱が閑散期みたいなゆるいゴーサインを出し、ずっと左手を股間に添えて(まるでそれが蓋であると息子に暗示させんばかりに)鑑賞しておりました。

病院破壊のシークエンスが面白かったです。
のっそりと動くカメラは、暴徒化する人々より遅れを取って院内を回っていきます。その為カメラは、暴力が行われる瞬間であったり、暴力の行使された残骸であったりと、「生感」のある空間を映し出していきます。終いには、男二人がカーテンを剥ぎ取った先に痩せぎすの老人がおり、ピタッと場が停止するリズム!出来すぎてる!
この間だけは不思議と尿意を感じませんでした。もしかしたら漏らしたのかもしれませんが。

結論から言うと、私は尿意を我慢できませんでした。後半はヴェルクマイスター・ハーモニーに私の尿意も絡んで、より複雑怪奇な多重構造が展開していきました。そうなると、この映画は「偉いのは確かだけど、ありがたみが沸いてこない成人式の市長のスピーチ」みたいな様相を帯びてきました。私の思考は「いかにして話を追える程度の被害でこの映画から一時離脱するか」にシフトしており、それは最早、一種の編集作業と言っても過言ではありませんでした。ここで私のサタンタンゴで培ってきた「長回し予知能力」がここで発揮されました。主人公が線路上を進むシーンで「父さん!」と言わんばかりに長回しレーダーが反応したのです。と、同時に「早まるな!」と。「これ、ビジュアルポスター回収シーンじゃね?」と思って粘ってみたら案の定でした。素晴らしい英断。その後の入院シーンで再び「父さん!父さん!」となったので、今度こそはと迅速かつ穏便
に劇場を抜け、映画館に射し込む陽光がしばし私に色めくこの素晴らしき世界を思い出させ、良い牛の乳ばりに尿をひねり出し、劇場に戻るとまだ入院シーン(さっきよりカメラが引いている程度の変化)だったので、監督の長回しにここまで感謝したことは今までも、そしてこれからも訪れることはないでしょう。
かくして、「ヴェルクマイスター・ハーモニー(オシッコカット版)」は無事、完成したのです。