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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のryoのレビュー・感想・評価

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タルベーラの世界に浸る。
あの広場に漂っているかのように空気感を肌で感じる。

宇宙規模の運動としての日常。
コントロールなど出来ないのにも関わらず、その日常をコントロールしようとする人間。そして、ありもしない概念としての理想郷を創造する為に、全てをぶち壊そうとする。

ヴェルクマイスターの音階。
夜中にやってきたサーカスを乗せた車。
実在する鯨の神秘には目も触れず、実在しないプリンスの言葉の中に世界を見出そうとする人々。
挟み込まれるエステルの妻と署長のダンスが物凄く魅力的に感じるのは何故か。
そして広場の人々の暴動、無機質な行進。
裸で立ち尽くす老人。意味などなくただただそこに存在しているという感覚の凄さ。
そしてどうすることも出来ずに、ただ歩き回り、走り回り、見つめるしかないヤノーシュの人間らしさ。

最後のヤノーシュ、鯨。
実在する世界を見つめ、何とかそこで生きようとするもの、そして実在するしかないモノたちは、ただそこに茫然と取り残されるしかない。
東欧の歴史観、空気感からこそなのだと思うが、繰り返してきた世界の破壊、世界の否定を見せつけられたような気がした。
こんな感覚を持だざるを得ない世界はしんどすぎる。
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