わがはい

ストップ・メイキング・センス 4Kレストアのわがはいのレビュー・感想・評価

4.9
名門アートスクール出からインテリバンドと呼ばれ、1977年にデビュー。かのCBGBでラモーンズやブロンディ、テレヴィジョンとNYパンクシーンの一翼を担った。

・・・というくらいの予備知識こそあったものの音源だけではそこまで熱烈にはならなかった。

ただこのバンド全盛期を捉えた映像作品がもうとんでもない。
1回目はIMAXで鑑賞したのだが、デビッド・バーンが1人ラジカセを持っての登場で幕を明け、初期の代表者『Psycho Killer』のギター・カッティングだけで悶絶。
1曲ごとにサポート含むメンバーが合流していき、バンドメンバーも映像の中の会場も映像の外の我々も、時間と時空を超えてヒートアップしていく。映画館で座っていても体が勝手に動く。
『Life During Wartime』でボルテージは最高潮に。
中盤に若干息切れするのだが、それが小休憩になってまたいい。
オマケのトム・トム・クラブもあり、そしてバンドの最高到達点にして世紀の名曲『This Must Be the Place』へ。
温かい照明に照らされてバーンが朗々と「ここがその場所に違いない」と歌い上げる。
終始キュートなティナが終始強張ったバーンを緩和する。
ヨガで呼吸法を修得しているというバーンのピッチはステージでランニングしてもブレない。

トーキング・ヘッズの最高傑作はイーノと組んでアフロビートにアプローチした『Remain in Light』ではなく、この映像作品であると確信させる。

メンバーのインタビューは一切なし。
ただただフィジカル的な弛緩のない演奏で観る側の脳と肉体を刺激する。
完成された晩年の『American Utopia』と違い、未完成がゆえの魅力すらある。

「意味を理解することをやめる」
非の打ち所がない、血湧き肉躍る究極の音楽体験だ。
わがはい

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