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ゴジラ-1.0/Cのシネラーのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0/C(2023年製作の映画)
5.0
各国の映画賞で評価されて
全世界興行収入が140億円を突破している
『ゴジラ-1.0』であるが、
私自身も3回劇場で鑑賞している中、
4回目の劇場鑑賞はモノクロ版である
本作を選択。
正直言って、こちらを通常版として
公開してくれたらと素直に喜ぶ位に
全く同じ内容でも全く違う印象を受ける
モノクロ版だった。

まずは本編が開始される
東宝ロゴなのだが、
その部分がカラーだった事に
残念と思ってしまっていたのだが、
そこから昔のモノクロの東宝ロゴへと
移り変わった瞬間、
その時点で心を掴まれてしまった。
いざ本編が開始されると
通常版と変わらない物語が展開されるが、
モノクロによる美術的な新たな発見や
作品の雰囲気が一層の深みを
持たせているようだった。
ゴジラや戦艦が掻き立てる白波や
火花に街中での噴煙といった描写が
モノクロで細かく確認でき、
通常版ではあまり気に止めなかった
CGを含めた美術の細かさが
大きく表出されていると思った。
個人的には、
戦闘機"震電"に覆い被った布を剥ぐ際に
埃が舞っているのを確認できただけで、
ちょっとした喜びが感じられた。
又、通常版で不満点に感じていた
赤裸々に心情を発する人物描写も、
モノクロによる前時代的な効果なのか
違和感が減退しており、
通常版よりも昭和的な印象が
更に強まった事で緩和されたようだった。
人物の顔や衣服の汚れといった部分も
通常版では一部が綺麗過ぎると思えただけに、
それらをモノクロによる表現や想像等で
際立たせているのも良かった。

そして、通常版でも大好きだった
ゴジラの場面だが、
通常版においては格好良さが恐怖感を
抑えてしまっている印象もあったが、
それが本作では逆転して怖さが勝り、
初見時並みにゾッとする感覚を覚えた。
大戸島の呉爾羅の場面に
ゴジラの銀座襲撃といった場面は、
恐怖感が更に磨きがかかっている上に、
その昭和当時のドキュメント映像を
観ているかのようだった。
しかしながら、モノクロにした事で
初代『ゴジラ』とのオマージュを
より感じさせたのは終盤での海神作戦だ。
ゴジラの熱線によって
甲板上をはじめとする画面が白くなり、
海中に引きずり込まれるゴジラの描写、
奏でられる"ゴジラのテーマ"という
多くの要素が初代『ゴジラ』を連想させ、
通常版よりも大きく
胸が躍り出る見せ方だと思った。
基本的に黒色で表現されるゴジラだが、
所々の白みによって立体感が増した上で
体表が明確になっているのも良かった。

個人的には格好良さや派手さを
感じるなら通常版、
時代背景や原点回帰な恐怖感を
感じるならモノクロ版だと思った。
『ゴジラ-1.0』が好きなら
一見の価値は確実にあり、
なんなら通常版よりも本作の方が
私自身は好きだった。
まだ劇場へ足を運ぶつもりでいるが、
モノクロ版が主流となりそうだ。
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