ひでやん

カンダハールのひでやんのレビュー・感想・評価

カンダハール(2001年製作の映画)
3.4
ブルカ越しに見た母国の悲惨な現状。

アフガニスタンからカナダに亡命した女性ジャーナリストが、母国にいる妹から自殺を仄めかす手紙を受け取り、妹を助けるためカンダハールへ向う。

9.11テロ事件は、旅客機がビルに衝突する映像が衝撃的だったが、タリバン占領下のアフガニスタンの状況はまるで見えなかった。今作は、妹に会いに行くナファスという女性の旅路であるが、彼女の目を通してアフガニスタンの実態が描き出される。

抑圧された女性たち、難民の実態、地雷、内戦、飢餓、干ばつ… 5分ごとに人が死ぬというその国は絶望的で、日本がいかに平和であるかを思い知らされた。オープニング映像の日食はアフガニスタンという国を表しているようで、希望の光は覆い隠されていた。

学校の授業では大量殺戮兵器とコーランを頭に叩き込まれる子供たち。その異様な光景の中でコーランは読めないが歌は得意な少年が唯一子供らしく思えた。

子供は遊びたい、ナファスは妹に会いたい、義足に群がる男たちは歩きたい、ただそれだけなのにそれができない。パラシュートで投下される義足に、松葉杖の男たちが走り出す場面が印象的だった。

ドキュメンタリーのように描かれる危険に満ちた女性の旅路、その果てにある感動を待っていたが尻切れとんぼ…。85分で終わるのは潔いんだけど、あと10分足してゴールを見せてほしかった。
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