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カンダハールのakrutmのレビュー・感想・評価

カンダハール(2001年製作の映画)
4.3
タリバン支配下のアフガニスタンを舞台に、妹から自殺をほのめかす手紙をもらったカナダ在住の姉が妹の暮らすカンダハールに向かう旅路を描いた、モフセン・マフマルバフ監督のロード・ムービー。主人公の姉・ナファスを演じているのは、実際にアフガニスタン出身でカナダに亡命し、ジャーナリストとして活躍しているニルファー・パズィラ。本作の内容にも彼女の実体験が生かされている。

ロードムービーではあるが、普通の旅路とは異なり女性一人では危険すぎるので、どうにか同行者をみつけてカンダハールに向かうのを繰り返していく。事実と虚構が入り混じったドキュメンタリー風の映像は、直接的に戦闘や人々の暮らしぶりを描いているわけではないが、義足をもらうために赤十字に集まる地雷で足を失った人たち、貪欲にお金を稼ごうとする大人、白骨死体が身につけていた指輪を売りつけようとする子供、アフガニスタンに潜んでいるエセ医者など、旅する主人公が行く先々で出会う人々や出来事を通じて、当時のアフガニスタンの過酷な状況を達観した視点から表現している。ニュースなどを通じてアフガニスタンの状況を表面的に知っているだけの(世界中のほとんどの)人にとって、単なる知識以上の情報量を含み、人々の内面に訴えかける、とても印象に残る作品である。

当然ながらアフガニスタンでの撮影は不可能なので、ほとんどのシーンはイランで撮影されている。なお、作中でイスラム教に改宗したアフリカ系アメリカ人のエセ医者を演じたハッサン・タンタイは、イラン革命直後にイランの反体制派でホメイニ師の批判者であった人物を暗殺した実際のテロリストでもある。
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