RiRi

ピアノ・レッスン 4KデジタルリマスターのRiRiのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

試写会にて鑑賞。
かなり好きな作品なので今まで何度も見てきたけれど、その時のコンディションで受ける印象が随分と異なってくる映画だと思っています。
鑑賞日は風の強い雨の日だったので、「絶好のピアノ・レッスン日じゃん!」って思いながら会場に向かいました。
土砂降りの雨や荒れた海といった徹底的な激しい自然描写がこの映画の魅力の一つだと思います。

物語の19世紀英国といえばビクトリア王朝時代。
品行方正を良しとし、今の感覚からは考えられないほどの固さがある時代で、父から夫へと支配者が変わっただけのエイダの環境は生き辛いだろうなと思います。
個としての彼女を見てくれない。話しても話さなくても結局エイダという一個人を尊重してくれないのなら、彼女はあえて「話さない」を選択した人なのかもなと。
その中でべインズだけは彼女をよく見ていたというのが彼女の変化のきっかけなのかもしれません。
やり方はなかなか卑怯ですがね。
とはいえ夫のスチュアートだって何も考えていない訳じゃなくて、彼は彼なりになんとかしようともがいていたと思います。

最後のピアノを海に捨てるシーン。
沈んでいくピアノにあえて自分の足を引っかけて落ちていくエイダ。
ピアノと共に水底に沈みながら、一瞬呆けたようになった後にもがきながら浮上していく様は、彼女が一度死んでもう一度生き直すことを選んだということかなと。
男性も女性も子供も自然すらも結局思い通りにならない中、もがきながら生きていくしかないんだろうなと感じました。

この映画はいろいろなシーンが印象深い作品で、
荒れた海、土砂降りの森、海辺に打ち上げられたピアノ、指を切断されてからエイダが泥に蹲るまで、そして海にピアノを捨てるシーン等々…。
力強く徹底的に画面に映される様は圧倒されました。
耳に残る印象的な楽曲ももちろん素晴らしく、とても良い映画体験でした。
RiRi

RiRi