このレビューはネタバレを含みます
30年前に出会い、ずっと大好きだった映画を劇場で鑑賞出来たことに感謝!
地方住みのため、リバイバル上映を鑑賞するチャンスがなかなか無いので感慨もひとしお。
今日ほど悪天候を嬉しく感じた日は無いな。
行きも帰りも、どんより灰色の空と強風と豪雨という、まるで作品の中に入り込んだかのような天候。
良い感じの序章からの鑑賞、そしてどっぷり余韻に浸りながらの帰宅。
いや、もう最高。
映像も音楽も本当に美しい。
マイケル・ナイマンの琴線に触れる旋律。
海岸、森、壮大な自然。
ストーリーはきっと年齢にもよるのかも知れないけど、かなり好き嫌いが出ると思う。
簡単に不倫物語じゃん、と捉えてしまえばそうなのかもしれないし。
子供の事考えなさいよ、というのが正しい意見。
それでも、頭ではどうにもならない、感情に突き動かされての生々しい人間らしさが表現されていて私は好きだった。
スチュアートは悪くない。
単純に置かれた環境によって形成されてしまった不器用な様が痛々しい。
彼なりの受け入れ方、乏しいながら精一杯の愛情表現。なんか方向は間違っちゃってるけど。
⭐︎残念ポイント1
「彼女、どう思う?」
(容姿が気になるスチュアート)
「疲れてるみたいだな」
(内面を気遣えるベインズ)
→恋愛経験少なかったら仕方ないよねー。そりゃ、見た目とか気になるよねー。
⭐︎残念ポイント2
ピアノは重いからと運ばないスチュアート
(あの険しい山道は確かに難関)
ピアノを運び、調律までして彼女を迎えるベインズ
(気を引く為であっても、彼女の心に寄り添った行動)
鑑賞中、何度も
「あー、スチュアート、あんたそう言うとこだよ」
と思うことはあったけど、仕方ないよねという気持ち。
スチュアートは自分のテリトリーと考えの中で新しい生活をともに築いていこうとしているし。
ベインズは彼女の今を受け入れて、愛情で包み込もうとしている。
エイダの心の開放には、余りある強い、時には変態チックだなと思える程の愛情が必要だったんじゃないかな。
個人的にハーヴェイ・カイテルが好きなので、全く気持ち悪さも感じないんだけど。
苦手な人にとっては強烈なアプローチが多いかも笑
【おかみさんのゆるっとポイント】
⭐︎海岸でクルクルまわるフロラと喜びを感じながらピアノを弾くエイダ、それをいつまでも、いつまでも見ているベインズ。
今まで能面のような無感情な張り詰めた顔が、クシャっと崩れて無邪気な愛らしい笑顔であの美しい旋律を奏でる姿。そりゃ、惚れるよね。
一番、好きなシーン。
⭐︎ピアノを自分の脱いだシャツでキレイに拭いていくベインズ。知らない間にリコーダーを人に吹かれていたぐらいの恐怖を感じる人もいるかな。ふく、繋がり。
本気で好きなんだなというのは伝わった。
⭐︎あの可愛い洋服でぬかるみ…。洗濯物なかなか大変そうだな。
家父長制の中で生きた女性の自立、自我の解放など難しいアレコレは詳しい人に任せておいて。ただ、ただその時に心に響くアレコレを感じ、これからも何度も何度も観たいな。