古川智教

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターの古川智教のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

アンナ・パキンが演じる娘は天使=媒介者であり、この媒介者をピアノレッスンの間、締め出して直接性を享受しようとしたがために悲劇がもたらされるわけだが、そこからの救済もまた媒介者によってしか起こらない。ピアノという直接性(声を失った音の純粋性)を放棄することは、愛の直接性をも海底に沈めて眠らせておくということだが、そうした直接性を通過することでしか愛の成就には至れないのではないか。直接性は維持することが困難であり、恐ろしくもある。(頭の中に直接エイダの声が聞こえたがために妻を手放す夫のように)エイダが声=媒介を獲得しようとするとき、黒いヴェールに顔が覆われているのはそうした直接性との対峙の仕方を示してはいまいか。
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