sazanami

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのsazanamiのレビュー・感想・評価

4.0
この作品は25年ほど前にレンタルビデオで見ていて、大まかなストーリーは覚えていたものの、音楽以外は正直そこまで印象には残っていなかったんです。
今回見返して「なんでこれに『印象薄い』なんて思ったのか」と、当時の自分の感性を疑いました。映画館でポスターを見て「そういえば昔ビデオで見たな、せっかくだから見返してみようかな」と思ったのですが、見に行って正解でした。

まずマイケル・ナイマンのあの音楽を、劇場の音質音量音響で体感できたのが本当によかった。ニュージーランドの自然が発する音が、大は荒れる海の音から小は森の中の雨音や動物のかすかな声まで、劇中でちゃんと聞こえてくるのもよかった。
あとは映像。特にエイダとフローラがニュージーランドにたどり着いた場面を始めとする海と、何度か挿入される森の俯瞰が本当に美しい。

話すことをやめてしまうのは、よほどの意思がないと難しいはずです。それを6歳にして決断実行してしまうのには、そうせざるを得ないだけの出来事があったのではないか。
終盤、マオリの男性がピアノのことを「棺桶」といったけど、あのピアノはまさにエイダの棺桶となった。
棺桶とともに海に沈み、話すのをやめた自分、やめざるを得ない経験をした自分を葬り去り、再度声を発するようになった。
それができたのは、やはりベインズとの関係があったからだろう。
そしてスチュアートは、なぜエイダがベインズのもとに走ったのか、きっと最後まで理解できなかったんではないか。

そんなことを考えました。
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