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ジェヴォーダンの獣 ディレクターズ・カットのTakiRe9uieNのレビュー・感想・評価

4.8
ここに来てディレクターズカット!?
僕の好きなジェヴォケモが帰ってきた!

⚪︎あらすじ

 18世紀のフランス、田舎町であるジェヴォーダン地方で獣害事件が相次いでいた。フランス王は謎の獣の調査として、王宮博物学者のフロンサックと部族出身の友人であるマニをジェヴォーダンに遣わした。フロンサック一行は獣についての聞き込みを始めたが獣は家畜よりも人を率先して襲い、用意した罠にもかからなかった。調査は難航し犠牲者も日に日に増えていく一方だった。フロンサックは獣の正体を突き止め、討伐できるのか?



⚪︎史実上でのジェヴォーダンの獣について

 18世紀後半、田舎町のジェヴォーダン地方で起きた獣害であり犠牲者は100人以上をゆうに超えていた。獣の容姿については人それぞれ違っており、「真っ黒の巨大な狼」という人もいれば、「縞模様の尾が長い狼」という証言があり不可解である。この意見の食い違いの理由は当時フランス革命が起きていて獣害被害に本腰を入れられず資料が余り作られて居なかった説があります。
「獣」の被害が大きくなり過ぎて当時のフランス王朝のルイ15世が精鋭である竜騎兵を送ったという話しがあります。ボーテルヌというハンターが「獣」を狩猟しその死体を剥製にしルイ15世に送り事態を収拾したかに思いましたが、その後も獣害は止まらず最終的にはジャンカステルというハンターが「獣」と見られる狼を撃ち殺したことにより村に平和が訪れたため「獣」が死んだことを確信したそうです。狩猟された「ジェヴォーダンの獣」の死体はすぐに腐敗し捨てられており現存していないため、本当に狼だったのかは未だ謎です。
 一説によると獣を狩猟したジャンカステルは変わり者だったらしく「獣」に人を襲わせるように調教をし自分が「獣」を倒した英雄のように自演を行なったという憶測まで生まれました。

⚪︎「獣」による被害の概要と獣の正体の考察(ネタバレなし)

 「獣」の被害者のほとんどは食われてはおらず、引っ掻き傷や噛まれ傷による出血が死因になっているため、一部の人々は狼男による犯行だと恐れるようになった。

・オオカミ説
「獣」の容姿からして一番近しいのが狼ではあるのだが、狼は警戒心が強く滅多に人間を襲わず、一匹で行動していた「獣」の習性とは一致しない。狼が狩りに使うのは顎による噛みつきなため、仮に狼が「獣」だとしたら被害者遺体に引っ掻き傷が残るのは奇妙である。

・ヒグマ説
狩りを行うとき牙や爪を使うため被害者の死因に最も近い説だが、容姿があまりにも「獣」と違うため極めて薄い説である。

・ライオン説
当時フランスとアフリカは積極的に貿易をしており飼っていたライオンが野生化したという説。実際に貴族がアフリカの動物を飼育していた記録もある。狩猟された「獣」にも「赤黒い立髪があった」という話しもある通り容姿も似通っています。


⚠️ネタバレ感想⚠️






 モンパ二映画の中でも一番好きな部類、その中でも「ジェヴォーダンの獣」は実話ベースで作られている作品なので史実と比べてどうなのか、など考察しがいがあり楽しかったです。
もとから好きな映画だったのでディレクターズカット版はアツすぎました。

⚪︎映画でのジェヴォーダンの獣の正体

 ライオンです。初見ではめちゃくちゃアフリカの話ししてくるなぁ・・・くらいしか思いませんが前述したようにフランス、アフリカ間の交流は結構あったらしく、史実上での一説であるライオン説を持ってきたのかなぁと思います。この映画の良いところは結構史実に忠実なんです。前述したボーテルヌ(別の獣を王様に献上した男)やジャンカステル(実際に獣を狩猟した男)もこの映画に出てきますし、上記の獣はライオン説、そして獣は人を殺すように手懐けられているという説などなどもちゃんと取り入れられていて、深掘りするほど史実と同じでどんどん面白くなってきます。
ジェヴォーダン地方の貴族の人たちが獣除けとして女装をしていましたが、あれ実際に効果があると信じられていて本当にやってたらしいです。

⚪︎貴族たちは何を企んでいたのか?

 サルディスやジャンフランソワを中心にフランス王であるルイ15世が掲げる啓蒙主義を否定する本を一杯作っていました。本の詳しい内容はわかりませんがざっくり説明すると「啓蒙主義に寛容な王を獣が罰しにくる」。と作中で言っていたのでサルディスたちは「獣」(ライオン)を使って人間を襲わせ、本に信憑性を持たせることにより、王の信頼を失墜させ国家転覆を画策していました。フロンサックはそのことに気づきそうになっていたため「獣」の件から外されそうになっていました。マリアンヌとマリアンヌパパ以外はみんなグルでした。

⚪︎ディレクターズカット版で追加されていた印象に残ったシーン

 当時DVDを擦り切れるくらい観たので(?)大体追加されたシーンは解りましたね。その中でもここ切る?って思ったのは、「獣」とは別の狼を「獣」に仕立てるシーンでこれは史実でのオマージュでもある大事なシーンだと思うんですけどなんで切っちゃったんだろう。

 この映画は自然がとてつもなく綺麗で雨のシーンとか見ていて気持ちいいです。史実に忠実ながら、実は裏ではこうゆうことが起きていたというifの世界っていう表現の仕方もよかったです。それに加え呪術などのダークファンタジー要素、多彩なアクションシーン、要素てんこ盛り最高です。
 モンパニは怪物を倒して平和になりました!ていう展開あるあるですが、今作の「獣」は国家転覆の道具としてしか扱われておらず、最後のシーンで「獣」に発砲するシーンでは疲れ切り安らかに眠るように死んでいくシーンはなんだか胸打たれました。
フランス映画特有の下品さもありますがどんな層でも一定は楽しめると思います。モンパニ最高!
TakiRe9uieN

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